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サイ・ヤング賞投手たちの異常なデータ…「悩みではあった」ダルビッシュも指摘する“不正投球問題の実情”
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2021/06/12 11:02
6勝2敗、防御2.28(6月10日時点)と今季も好投を続けるダルビッシュ有。オンライン会見で不正投球問題にも言及した
「うーん……。使ったことは……。わからないんだ。もしかしたら……わかりません。正直なところ、どう答えていいのかわからない」
潔白のダルビッシュは「悩みではあった」
その一方で不正投球を疑われていない代表格がパドレスのダルビッシュ有である。彼のスピンレートがそれを物語っている。
高い次元で一定し、変化がないことがよくわかる(下表を参照)。6月9日、ダルビッシュは今回の問題点を指摘した上で複雑な胸中を吐露した。
「昔から(滑り止めは)メジャーでは使われている。機構側もボールが問題でそうなっているのはわかっているし、見て見ぬふりをしていた。ただ途中で、どうしても度を超す人間が出てくる。アストロズのサイン盗みも、サイン盗みは普通にあるけど、一定のラインを超える人が出てきた。ただ、そういうことでタイトルだったり、契約金で迷惑をかけてしまう。付けるだけですごい変化球が投げられるというのは行き過ぎ。僕は過去2年間、いろんな人のスピンレートを見ていますから。
僕が一生懸命に変化球を考えて、人に教える意味があるのかなと最近は思っていて、悩みではあった。ちゃんとした方向に行くことを願います」
黙認していたのに… すぐに選手を「犯罪者扱い」
今季、機構はボール交換となった試合球を全て回収している。専用係員が球場のカメラ席などに控え1球1球を記録に残し、回収したボールにシールを貼っている場面も見かける。
コールやバウアーの他にもドジャースの投手数人とレッズの投手に疑いがかけられている。ともにバウアーが所属した球団であるのは偶然なのだろうか。
とはいえ、MLB機構はいつも唐突だ。20年前のステロイド使用も明確なルールを定めずに黙認していたのを一転して使用禁止にした。選手に猶予を与えずに犯罪者扱いにする。これはいつも彼らが行う常套手段だ。
今回も使用球を日本製に替えるという考え方もあって当然と思うが、米国ローリング社に一括発注している利権も絡んでいるのか、その発想にはまったく至っていない。機構のトップに君臨する高学歴、高収入のエリートには、必死に戦う選手の痛みなどわかりはしないのだろう。
選手に責任を押し付けるだけでなく、機構側にも自戒の念をしっかりと持って欲しい。その上で説明責任を果たして欲しいと願うばかりだ。
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