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シェフチェンコ44歳がEURO2020最年少監督…“引退後の異常な歩み”とは ウクライナの若武者とダークホース候補に
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byGetty Images
posted2021/06/07 17:01
ウクライナの指揮を執るシェフチェンコ。その歩みは“異常”とも言える
ミラン黄金期の“あの男”が右腕に
中でも大きかったのが、マウロ・タソッティの存在だ。ミラン黄金期の最終ラインを支えた名手で、引退後もミランひと筋で指導歴を積んできた男である。
シェフチェンコは自身よりも20歳近く年上の指導者に頭を下げて、入閣を承諾させた。タソッティの分析力と守備組織の構築は、ウクライナの躍進を大いに支えている。
では、肝心の代表監督は何をしているのか。それは適切な人材のピックアップと、人心掌握である。
ベースとなるのは国内リーグを牽引する2強だ。今季のウクライナ・プレミアリーグを制したディナモ・キエフ勢は、大会に臨む26人のうち最多の10枠を占める。ライバルのシャフタールからはやや少ない7人だが、アンドリー・ピアトフを主将に就けている。
つまり、所属クラブで培われている連係を代表チームに流用しつつ、CLファイナリストのジンチェンコ、イタリアで価値を高め続けるルスラン・マリノフスキーといった極上の国外組をちりばめているのだ。
優秀な若手をまとめるカリスマ性
優秀な若手も見逃せない。
左サイドでダイナミックな走りを見せるビタリィ・ミコレンコは昨夏、イングランドのクラブが注目と盛んに報じられた。18歳のイルリャ・ザバルニイは経験も重要となるCBのポジションで、クラブのみならず代表でもすでにレギュラー格となり、すでにチェルシー行きの噂が流れている。
EUROは、移籍市場直前の大事な見本市でもある。東欧のウクライナの選手にとっては、さらに大きな意味を持つことになる。
そうしたタレントを、シェフチェンコのカリスマ性がまとめている。
選手たちにすれば、子どもの頃からの憧れの存在。そのアイドルが、時にはともにボールを蹴る。ある日はPKを6本蹴って5本決めた。FWのアルテム・ドフビクは「試合でも30分、いやもっとプレーできるよ」と青年監督に舌を巻く。
今では古巣ミランの監督就任も希望している
代表監督就任は、政界再挑戦のための「支持率回復」を見込んだ選択とも噂されたが、今となっては将来的に古巣ミランの監督就任希望を口にしている。それは、単なるリップサービスには聞こえない。
いずれにしても間違いないのは、野心的な指揮官に率いられたウクライナ代表の目が、ギラついていることだ。EUROを飛躍への足掛かりとしたい。そう意気込む彼らを今大会のダークホースに挙げる向きが多いのも、大いにうなずける。