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71人死亡の飛行機事故“シャペコエンセの悲劇”の生還者にして唯一の現役選手が語る“復帰”「以前の姿に戻れるとは想像すら…」
text by
エリック・フロジオEric Frosio
photograph byL’Équipe
posted2021/06/07 11:00
シャペコエンセではキャプテン、左SBとして2冠に貢献したルシェウ。2020年は43試合に出場した
――事故の瞬間は思い出せないと語っていますが、飛行機の離陸前に隣りの席に移ってくるようフォウマンが求めたことはよく覚えているのではないですか?
「ああ、もちろんだ。最初、僕は見知らぬ人の隣に座っていた。でも、好きな席を選べたから、フォウマンが自分の隣に座るように僕を呼んだんだ。彼が僕の命を救ってくれた。事故が起こる直前までのことはよく覚えている。だが、その後は突然真っ暗になって……。むごたらしいシーンを何も見ずに済んだのは幸運だった」
31歳、夢はチャンピオンズリーグ出場
――フォウマンは音楽の世界に進出し、2019年には『ポップスター』(ブラジルのテレビ番組)に出演するまでになりました。
「彼は別の道を選んだ。僕はそれを嬉しく思う。もともと彼は音楽が大好きでよく歌っていた。今度はそれをブラジル全土にアピールできたのだから。ネトも新たな人生を踏み出し、シャペコエンセのスポーティングディレクターに就任した。今季獲得したふたつのタイトルは、彼にとっても最高の褒賞だった」
――31歳になりましたが、今でもヨーロッパのクラブでプレーする夢は捨ててはいませんか?
「ヨーロッパのクラブに移籍できると信じ続けるのは簡単じゃない。だが、僕のこれまでの人生で、簡単だったことは何もない。すべては可能だと今も信じている。サッカーでやりたいことはまだたくさんある。クルゼイロがその機会を提供してくれた。世界中の目が僕らに注がれている。今後どうなるかは誰にもわからないが、扉はきっと開かれるだろう。今も僕の夢はいつかチャンピオンズリーグでプレーすることだ」