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【Bリーグファイナル】準決勝を“大博打”で勝ち上がった宇都宮ブレックス…千葉との決戦ではなにが飛び出す? 

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青木美帆

青木美帆Miho Awokie

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2021/05/28 17:00

【Bリーグファイナル】準決勝を“大博打”で勝ち上がった宇都宮ブレックス…千葉との決戦ではなにが飛び出す?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

セミファイナルの大一番で3番に起用されたギブス。GAME1は4得点9リバウンド、GAME2は6得点3リバウンドで勝利に貢献

 ギブスの3番起用は、安齋がシーズン中から温めていながら、なかなか実戦で使えずにいたものだった。結局使えたのは4月25日の川崎戦終盤の3分だけ。クォーターファイナルのサンロッカーズ渋谷戦に向けた練習や試合でも一切使わず、セミファイナルの相手が川崎に決まってから大急ぎでブラッシュアップしたという。

 レギュラーシーズンを最高勝率で勝ち抜いた宇都宮は、自分たちが築いたスタイルに大きな自信を持っている。そもそも、安齋体制になった2017-18シーズン以降、チームのシステムに大きな変化はなかった。確固たる理想像を追い求め、それを削り出していくようなチーム。それが宇都宮ブレックスだと思っていた。

 しかし安齋は、シーズン途中どころか“負けたら終わり”のCSで博打を打った。その理由を記者に問われると、以下のように話した。

「もちろん不安もありました。いつもと違うことをやって負けたときのダメージって、めちゃくちゃ大きいですし、プレータイムが減る選手も出てきますし。本当は変えたくなかったんですけど、川崎に勝つためには変えざるを得なかったっていう感じですね」

比江島が前髪を上げれば負けなし

 試合前日、安齋は比江島に「明日は前髪を上げてこい」と指令を出した。“比江島が前髪を上げた試合は負けなし”というご利益にすがろうとしたからだ。

「CSは運も味方にしなきゃいけないと思っています」と、スーツ、シャツ、ネクタイ、パンツのコーディネートもクォーターファイナルの2連戦と同じものにした。とは言いつつも「ゲンがなくても勝ってやる」という思いが捨てきれず、ルーティンとしていたアシスタントコーチの佐々宜央との食事を取りやめたと笑った。

 ギャンブルだろうが、ジンクスだろうが、勝つためにできることは何でもやる。この一戦にかけた安齋の執念を感じさせるエピソードだった。

 本稿は、安齋の勇気ある決断にフォーカスしてきた。最後に、安齋がこれを決断できた最大の理由を紹介しよう。それはすなわち、選手たちに対する信頼と、揺らぐことのないチームの土台だ。

 GAME1終了後、新しいラインナップへの手応えを問われた安齋は、「長く一緒にやっている選手が多い分、彼らの共通理解やセンスに助けられました」と話し、比江島は「びっくりはしたけれど、僕らを信じて提案してくれたんだと思う。ブレックスの選手はみんなIQが高いし、どんなスタイルにも対応できる自信がありました」と続いた。

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