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【50歳でメジャー優勝】フィル・ミケルソンがゴルフ界の“永遠のヒーロー”になった理由「まるで劇場で眺める映画だ」
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2021/05/25 06:00
史上最年長メジャー優勝が懸かった18番ホール、ミケルソンのプレーに興奮するギャラリーたち
50歳といえば、ゴルフ界ではシニア入りする年齢であり、「50歳でメジャー大会を制することはできるのか?」と問われたら、心の底から「イエス」と答える人は決して多くはなかったはずだ。
これまでのメジャー最年長優勝はジュリアス・ボロス(1968年全米プロ)の48歳4カ月。帝王ジャック・ニクラスのメジャー通算18勝の記録は1986年マスターズを制覇した46歳2カ月で止まった。
59歳のトム・ワトソンが勝ちかけて勝てなかった2009年全英オープンは、加齢という動かしがたい現実と人間の無力さを世界に突きつける形になった。
そんな先人たちの前例をもってすれば、50歳のミケルソンがメジャー優勝を成し遂げることは、「まさか」「無理でしょ」と一蹴される夢物語だと思われていた。
しかし、ミケルソン自身は大真面目に「50歳でもメジャーで勝つ」ことを目指し、日々、鍛錬や工夫や努力を積んでいた。
枯れることのない「勝利への意欲」
全米プロ開幕前の練習ラウンドでは、同じシニア選手である54歳のスティーブ・ストリッカーとペアを組み、ザック・ジョンソン&ウィル・ザラトリスの若いペアとチームマッチをしていた。
「途中でフィルは『オレたち、3アップしてるよね』などと言いながら、勝つ気満々だった。フィルの勝利への意欲は枯れることがない。彼は常に本気で勝利を目指している」
ペアを組んだストリッカーは、同じシニア年齢になっても、冷めるどころか一層熱くなっているミケルソンの戦意に、ひどく驚かされた様子だった。
しかし、驚くのはまだ早い。チームマッチの熱戦は単なる序章にすぎず、世界を驚かせるドラマは、そのすぐあとからキアワの屋外シアターで開幕した。