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【50歳でメジャー優勝】フィル・ミケルソンがゴルフ界の“永遠のヒーロー”になった理由「まるで劇場で眺める映画だ」
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2021/05/25 06:00
史上最年長メジャー優勝が懸かった18番ホール、ミケルソンのプレーに興奮するギャラリーたち
メジャー5勝目となった2013年全英オープン以来、試行錯誤を繰り返し、多くの犠牲を払ってきたミケルソンのメジャー6勝目を挙げるまでの道程は、長く険しいものだった。
米ツアー通算8勝を挙げているケプカは、そのうちの半分に当たる4勝がメジャー優勝だが、その前後では両ひざも首も腰も痛め、なんとか回復してきた今はパットが不調だ。なんとか打開しなければとパット練習を必死で繰り返したら、不調だったパットは「キャリアで最悪」にまで陥り、「調整をやりすぎたのかもしれない」と肩を落とした。
メジャーで何度も勝利してきた強者たちにとっても「次なるメジャー制覇」には高いハードルと重いプレッシャーが付いて回る。
わずか1カ月前にマスターズを制し、メジャー初優勝を遂げたばかりの松山英樹にとっても「次なるメジャー制覇」は今後の永遠の課題になる。
マスターズ直後の凱旋帰国以降、ゴルフクラブを握らずに過ごしたという松山の「しばしの休暇」を責めることなど誰にもできないが、戦線復帰2戦目でメジャー大会を迎え、ギアを上げきれなかったことは、彼の言葉通り、「しばらくゴルフをやっていなかった代償」だった。
2日目は68で回って4位タイに浮上しながら、3日目後半にガラガラと崩れ落ち、最終日も猛チャージとはいかず、首位と7打差の通算1オーバー、23位タイどまり。
「基本的なショット、パットを調整して、もう1回作りたい」
ミケルソンが証明してくれたもの
松山が50歳になるまでには、まだ20年以上が残されている。焦る必要はないし、ミケルソンの偉業を目にした今は、なおさら焦ることはないと信じられる。
松山がマスターズ制覇を成し遂げ、「日本人もメジャーに勝てることがわかったと思うので、みんなも頑張ってほしい」と語ったように、ミケルソンの最年長メジャー優勝は、50歳でもメジャーに勝てることを世界に示した。
「無理」「限界」という先入観を取り払ったメジャー優勝は、だからこそ人々を興奮させ、勇気と希望をもたらしてくれた。
コロナ禍に翻弄されている今だからこそ、メジャー大会で見ごたえあるドラマが続いていることが、とても嬉しい――。