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引退・福岡堅樹、“最後の試合”でもトライ 「ラグビーのおかげで効率だけでは…」 W杯秘話と名将エディーに怒鳴られた日
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byGetty Images
posted2021/05/23 17:02
2019年ラグビーW杯、福岡堅樹の疾走ぶり。文武両道のトライゲッターが日本列島を沸かせた
19-12で迎えた後半37分のことだ。苦し紛れだったアイルランドのボール回しを見逃さず、きれいにインターセプト。前方には邪魔する相手は誰もいない。走りきればダメ押しのトライとなる。
福岡はボールを持ちながら行く手にある大きなモニターを見ていた。相手ウイングが必死に追走をしてきたことがわかると、一度だけ後ろを振り返った。その一瞬のスピードダウンで差を詰められ、ゴール前でタックルを受けたのだった。
しかし、その反省を生かせるのが福岡の聡明さだ。サモア戦でもトライを決めると、雌雄を決するスコットランド戦では見事なボール奪取からの独走トライを決め、ジェイミー・ジャパンの決勝トーナメント進出に大きく貢献したのだ。
五輪延期によって優先した医師への道
<名言4>
自分の人生で大きな決断をしたときには、必ず、どの選択が一番後悔をしないかを常に考えてきました。
(福岡堅樹/NumberWeb 2020年10月22日配信)
◇解説◇
セブンズ日本代表としても期待が高かった福岡だが、東京五輪の1年延期によって、かねてより志していた医師への道を優先することを決めた。
2020年秋、福岡はこのようにも語っていた。
「やろうと思えば挑戦できたのかもしれませんが、五輪が延期になるかもしれないという話が出てきたあたりから今後どうするかを考え始めていました。僕の場合、終わりが決まっているから頑張れるという部分も強くて、(五輪が)1年延びたときに自分が期待したパフォーマンスを維持できるかも含めて、100%、YESとは答えられないなと考えていました。
それに、自分自身が決めていたタイミング、自分の選択を変えるのもイヤだなと。自分が言ったことは貫きたいという思いがありました。さらに、そこで切り替えた方が、次への準備がスムーズに進めるなとも考えました」
果たして、福岡は順天堂大学医学部に合格。そして2020-21シーズンもトライを積み重ね、2021年5月23日を迎えた。
日本選手権を兼ねたトップリーグプレーオフトーナメント決勝、パナソニックvsサントリー。福岡にとっての現役ラストゲームでも、その俊足が煌めいたのだ。