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三浦龍司19歳の日本新記録はリオ五輪では何位相当? “記録ずくめ”の順大エース「五輪に向けて現実味が増した」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byAsami Enomoto
posted2021/05/15 17:03
18年ぶりに3000m障害で日本記録を更新した順大の三浦龍司。多くの記録を突破してきた実力者がついに日本歴代の頂点に立った
島根県浜田市の浜田ジュニア陸上教室で陸上を始めた三浦が得意だったのは、もちろん長距離走。だが、その当時の指導者の上ヶ迫定夫さんは、三浦に障害競技の才能を見出していた。将来3000m障害に取り組むのを見越して、ハードリングの技術を習得させようと、80mハードルにも取り組ませていた。結果として、その先見の明はずばりと的中することになる。京都の洛南高校時代には30年ぶりに同種目の高校記録を更新。そして、大学1年目に、当時の日本歴代2位であり、41年ぶりの学生新記録、37年ぶりのU20日本新記録となる好記録を打ち立てると、その翌年にはついに日本記録保持者にまで上りつめたのだから。
圧倒的に三浦がレースを支配していた
それにしても、この1年での三浦のさらなる成長ぶりには驚かされる。
大学デビュー戦となった昨年7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会も相当なインパクトだったが、この時は、前半は実業団選手のハイペースに食らいつき、後半はケニア人のフィレモン・キプラガット(愛三工業)と競り合いながらペースアップしてフィニッシュラインに駆け込んだ。もちろん力がなければ出せないタイムだが、いわば、周りの力を借りて“出ちゃった”タイムという印象もあった。
ところが、この5月のレースは、圧倒的に三浦が支配していた(ように見えた)。三浦は、実力者を従えて序盤からレースを牽引。1400m過ぎには塩尻らに前を譲る場面もあったが、他の選手の反応を冷静に見極めながら走っていた。
「最後の1周まではタイムを見ていなかった」と言うが、「若干ペースが落ち気味かな」と感じるや、2000mを前に再び先頭に立ち、ペースアップを図った。実際に、2000m通過の時点では、五輪標準記録のペースからはやや遅れをとっていた。
「成長したなと思うポイントは、ラスト2周や、ラスト100mから切り替えて、スピードアップできるようになったこと。この1年でギアが増えたと実感できています」
こう話すように、スピードアップは自在。一気にペースを上げて、快挙を成し遂げた。
4月29日の織田記念では「中だるみしてしまった」と課題を残したが、短期間での修正力も見事だった。
また、高校時代には歯が立たなかったキプラガットにも、昨年7月に続いて勝利。今度は、力を借りるどころか、常に前を走り、最後は突き放してみせた。