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【51歳に】辰吉丈一郎「ずっと喧嘩でいくよ。俺の原点やから」 カリスマ性は今も絶大、村田諒太「あの試合がなければ僕は…」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byMikio Nakai/AFLO
posted2021/05/15 11:00
1997年の辰吉丈一郎vsシリモンコン戦。若き日の村田諒太も感動したという
「4、5年前やったら完全に打っとった。でも……」
「あの時、なんで振り上げた手を止めたんか自分でもようわからん。4、5年前やったら完全に打っとった。でも、なんかそんなことしたらアカンて思たんやろ。大人になったいうことかなぁ、俺も。負けと同時にキャリアも積んだし」
敗北続き、トレーナーからの引退勧告。“辰吉はもう終わった”の声に抗うように戦った男が得た経験が、自らが打ちのめした対戦相手を思いやる気持ちを生んだのかもしれない。
それでも――最後に「これだけは言うとくわ」と語ったポリシーが「喧嘩」を貫くことだった。
「人に見られたとなったら、『喧嘩やったら負けんぞ、俺は』って」
「普通のお父っつあんに戻ります」と言ったのだが
<名言3>
もう、技術や気持ちでカバーできる段階を越えてしまってるな。
(辰吉丈一郎/Number479号 1999年9月9日発売)
◇解説◇
王座奪還後、辰吉は2度の防衛に成功した。しかし98年の年末、3度目の防衛戦となったウィラポン・ナコンルアンプロモーション戦、6回にプロ2戦目以来となるダウンを食らうと、最後は強烈なラッシュの前にリングへと沈んだ。
その8カ月後、辰吉はウィラポンとのリマッチに臨んだ。しかし試合開始から一方的に打ち込まれ、最後は7回、レフェリーストップによるTKO負けを喫し、リベンジは失敗した。
冒頭の言葉は、試合のひと月ほど前、WBAバンタム級王者ジョニー・タピアがかつての辰吉への挑戦者であったポーリー・アヤラに敗れた試合のビデオを観た直後に、辰吉がつぶやいた言葉だった。いみじくも辰吉自身がタピアと同じ状況に陥ってしまったのである。
敗戦の翌日、「普通のお父っつあんに戻ります」と現役引退を表明した辰吉。しかしそこで終わらないのが辰吉の辰吉たるゆえんである。