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【世界戦直前取材】「20代前半で天国と地獄を経験した」“異色の元世界王者”高山勝成が明かす、37歳でもボクシングを続ける理由
posted2021/05/08 11:01
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Ed Mulholland/Matchroom
“37歳のチャレンジャー”が危険なタイトル戦に臨む。ミニマム級時代に日本人選手としては初めて主要4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)の王者となった高山勝成(寝屋川石田)が5月8日、テキサス州アーリントンで、1階級上のWBO世界ライトフライ級王者エルウィン・ソト(メキシコ)に挑むことになった。
王者ソトはこれまで18勝(12KO)1敗。キャリア4戦目以降は16連勝(11KO)と勢いがあり、4月9日に英興行王手のマッチルーム・スポーツと契約したばかりだ。高山には不利の予想が多いが、これまで32勝(12KO)8敗1無効試合という戦績を積み上げてきた大ベテランには恐れはないようだ。
当日のメインではサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)とビリー・ジョー・サンダース(イギリス)がスーパーミドル級の世界主要3団体統一戦を行い、会場はNFLダラス・カウボーイズの本拠地であるAT&Tスタジアムという大舞台。それでも百戦錬磨の高山なら臆せず力を出してくれるという期待感はある。
日本では未公認だった時代にIBFの王座を獲得、東京五輪を目指してアマチュア挑戦、30歳から高校・大学に進学、といったユニークな人生を歩んできた高山は、今回のタイトル戦をどのように捉えているのか。そして、これまで繰り広げてきた様々な挑戦の原動力となったバイタリティはどこから湧いてくるのか。テキサス入り前の4月27日、異色の元世界王者・高山にじっくりとその思いを聞いた。
◆◆◆
「ここでタイトルを奪えば誰も文句はないはず」
今回のオファーが届いたのは試合の約3週間前のことでした。ソト陣営は自分以外にもたくさんの選手に声はかけていたでしょうけど、その中でマッチルーム・ボクシングとチャンピオンが自分を選択してくれたことをすごく嬉しく思います。
連絡があった時は、やるかやらないかの二択。もちろん「イエス」「やります」と即答しました。こういう戦いは1日待ってくれとか、1週間待ってくれとか言ってたら次の選手に持っていかれてしまいますからね。その時点では自分が選ばれるのか、選ばれないのかはわからない状況でしたけど、幸いにもこの興行に出場できることになりました。
当初はWBAタイトルが目標だったんですが、WBAスーパーチャンピオン(=京口紘人、ワタナベ)がイエスともノーとも答えてくれないので、このまま待っていてもラチあかない。だったら団体は違いますが、ライトフライ級戦線に参戦するのであれば、ここでWBOタイトルを奪えば誰も文句はないはずだと考えました。
「ソトは24歳ととても若く、危険で、勢いのある選手」
調整期間が1カ月~1カ月半あれば楽だったでしょうね。しかし、こういう形での挑戦は海外ではよくあること。僕はそういうのもわかっていますし、全集中かけて調整しているので、リングに立ったときの自分が楽しみではあります。