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【チャンピオンシップ初進出】「ダークホースに僕らはなる」負傷者続出でも大阪エヴェッサが目論む“強豪食い”の戦い方とは
posted2021/05/07 17:03
text by
カワサキマサシMasashi Kawasaki
photograph by
B.LEAGUE
大阪エヴェッサがBリーグ5シーズン目にして、初めてのチャンピオンシップ(CS)進出を果たした。リーグ開幕初年度は進出を目前にしながらあとひとつが勝てず、昨季は西地区2位にいながらシーズンの中断で涙を飲んだ。5シーズン目にして初のCS進出を、陳腐に“悲願の”と表現すべきではないだろう。
なぜなら彼らにとってこの結果は、得るべくして得たもの。その準備は開幕前からすでにできていたと、キャプテンの合田怜は言う。合田は昨季に続いて今季も肩の脱臼を再発させて離脱してしまったが、積極的にチームに関わり、コートの外からチームを支え続けてきた。
「昨季の結果も踏まえて、自分のなかで今シーズンは絶対にCSに行ける手応えがありましたし、チームもそこに行ける準備が最初からできていた。なのでCS進出を決めても、あまり驚きはないんです」(合田)
とはいえ新チームの結成から、すべてが順調に推移したわけではない。コロナ禍の影響で、のちに大黒柱となる新外国籍選手のディージェイ・ニュービルの合流が遅れるなどチーム作りが思うように進まず、さらに天日謙作ヘッドコーチ(HC)までも病気療養で離脱と負が連鎖した。
プレー・トゥギャザー
それはチームに悪影響を及ぼし、開幕戦はチームプレーができない状態でも、B2から昇格したばかりの広島ドラゴンフライズを力で押し切ったものの、翌日の第2戦ではまさかの敗戦。翌週には川崎ブレイブサンダースに2戦とも完敗するなど、開幕から約1カ月の12戦で4勝8敗と苦戦する。天日HCから指揮権を預かり、HC代行を務める竹野明倫アシスタントコーチ(AC)が、あの時期を振り返って言う。
「天日さんがチームを離れることはやはり、かなり大きな衝撃でしたね。外国籍選手の合流が遅れるなど、序盤は厳しい戦いが続きました。その時期にコーチ陣からアプローチしたのはチームでプレーする、プレー・トゥギャザーだと、選手たちにものすごく言いました。あのころは、自分がボールを持ったら自分でシュートを打つだけで、ボールが回らない。お互いがチグハグな感じがものすごくあって、それを言ったのを覚えています。そこから徐々に、良くなってきた感はありますね」(竹野AC)
竹野ACが注入したマインドがチームに浸透し、潮目が変わり始めたのは、開幕から2カ月が経った12月になってからだった。昨季に特別指定選手として加入し、今季は序盤こそ出場機会が少なかったものの、12月2日の信州ブレイブウォリアーズ戦からスターターを任された中村浩陸は、司令塔独特の嗅覚でチームが上昇気流に乗りつつあることを感じ取っていた。