しかし、好事魔多し。同じ信州戦で今季シックスマンとして覚醒した橋本拓哉が、プレー中のアクシデントで右足アキレス腱を断裂する大ケガを負ってしまう。1試合平均約30分出場し、同13.4得点をあげていた日本人エースの離脱は、チームに計り知れない痛手。その穴を、若い日本人選手が埋めた。

　特別指定選手の高島紳司は橋本の離脱後、ほとんどの試合で20分以上起用されて、ふたケタ得点を2度記録。高島が大東文化大に戻ったあとは、“逆輸入ルーキーズ”のひとりとして開幕前から期待と注目を集めながら、長く雌伏の時を過ごしていた角野亮伍が、ついに目を覚ました。

アメリカの大学からBリーグ入りした“逆輸入ルーキーズ”の一人の角野。レギュラーシーズン最終盤にスターターに定着

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　角野は藤枝明誠高時代に世代最強スコアラーと名を馳せ、高校卒業後のアメリカ挑戦を経て、今季に大阪でプロデビュー。開幕当初はスターター起用もされたが、ディフェンス面の課題を克服できず、出場すらかなわぬ時期が長く続いた。橋本が戦線を離れたあとに途中出場でチャンスを得ると、やがてスターターへと成長。2度にわたってキャリアハイの21得点をあげ、チームに欠かせない得点源のひとりになった。

「僕らのチームは各ポジションでやることが決まっていて、それをしっかり遂行できない選手は使われない。僕はもとから、ディフェンスが苦手でした。でもディフェンスをしっかりやって2、3番ポジションの選手が走ることがコーチ陣の求めるもの。それをやることでプレータイムがもらえて、そこから自分の強みであるオフェンスを繰り出せる流れにつながったかと思います」（角野）

「走るバスケ」の起点となる男

　5月1日の滋賀レイクスターズ戦を落としたものの、同日に西地区4位（当時）の名古屋ダイヤモンドドルフィンズも敗れて大阪の初のCS進出が決まった。序盤の苦戦、相次ぐ主力選手の離脱、さらにはコロナ禍など数々の困難に見舞われた今季。チームをここまで引き上げる原動力になったのは、リーグトップ5のリバウンド奪取能力を誇るジョシュ・ハレルソン、チーム最多の1試合平均約20得点をあげる新加入のニュービル、そしてメンタル面でもプレー面でも強いキャプテンシーを発揮するアイラ・ブラウンの3人だ。大阪初のCSに向けても、彼らがキーマンになる。

　大阪の“走るバスケ”の起点は、リバウンド奪取にある。ハレルソンが奪ったリバウンドを、電光石火で前線に展開。そんな場面が多く見られれば、CSでも大阪が試合のペースを握るだろう。Bリーグ初年度に目の前でCS進出を取りこぼす経験をした大阪在籍4季目の男は、自身も初となるCSへ胸を高鳴らせる。

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