野球のぼせもんBACK NUMBER
「ショート10年寿命説」鳥谷敬も宮本慎也も…ホークス今宮健太29歳はどうなる? 異例の“定期的欠場”のウラ側
posted2021/05/08 11:03
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
KYODO
まだペナントレースは4分の1程度を消化しただけ。このわずかな期間に今年はもう、今宮健太の超ファインプレーを何度目撃しただろうか。
「たまたま際どい所に飛んできてアウトに出来ているだけ。ファインプレーはしようとして出来るものではないですから」
インタビューで今宮本人に水を向けるといつも通りに謙遜するが、並外れた守備範囲、超絶的な球際の強さ、異常な強肩を兼ね備えているからこそスーパープレーは生まれる。
「でも、あのプレーは自分のプロ野球人生の中でも3本の指に入りますね」
謙遜しがちな29歳が、そう振り返ったのは開幕2試合目だった3月27日の本拠地PayPayドームでのマリーンズ戦の1シーンだ。先発した高橋礼が制球に苦しみ、初回から4四死球で押し出しでの1点を献上した。
なおも2死満塁で鳥谷敬が放った打球は三遊間への痛烈なゴロだったが、これをショートの今宮が横っ飛びで好捕すると、ノーステップで一塁へ送球してアウトにした。まさにショートの見せ場。このスーパープレーで追加点を阻止すると、同点の9回裏には今宮が自らのバットでサヨナラ安打を放ってみせた。
筆者個人としては4月14日のバファローズ戦(PayPayドーム)の超ファインプレーも印象深い。3回1死走者なし。打者の大城滉二が放った打球は和田毅の足元を抜けていった。つい先ほどまで誰もいなかった二遊間をボールはそのまま転がると思われたが、次の瞬間に今宮がショートの位置からまるで忍者のように現れた。目一杯左手を伸ばしてキャッチ。勢いそのままに二塁ベース後方でくるりと回転し、そこから一塁の中村晃へノーバウンドのストライク送球を決めてみせた。間一髪のアウトに客席は拍手喝采だった。
12年前のドラ1「川崎宗則の後釜に」
ショートというポジションは内野守備の花形だ。
守備範囲が広く、ダブルプレーや中継プレーでも高い精度が要求され、盗塁や牽制のベースカバーなど様々な役割を担っている。
ゆえに高い身体能力と適切な状況判断能力がなければ、任されることが難しい。そのためショートを守る選手は自然とチームで中心的存在を担うことも多くなる。
今季がプロ12年目。球団は「川崎宗則の後釜に」としてドラフト1位で獲得し、その読み通りに川崎がメジャー移籍した後の12年から一軍に定着している。今宮にとってはプロ3年目のシーズンからだ。
つまり一軍のショートを守って10年目を迎えたのだ。
これは偉業と称賛されるに値する。それと同時に、今宮は一つの大きな区切りを迎えているのではないか。