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内田篤人「戦う選手好きだからね」の言葉を思い出す… 2部降格シャルケ、負債額2億ユーロ超からの復活はなるか
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/05/03 17:01
30試合でわずか勝ち点13。10年前はCL4強に躍進したシャルケは、再び強豪の座に戻ってこれるのか
ラウール、フンテラール、内田が輝いたあの頃と今は違う
夢を見ているときは楽しい。
ラウールが、素晴らしい動きから脱帽のループシュートを決める。フンテラールが内田のクロスからゴールを奪う。チャンピオンズリーグで欧州の名門と激闘を演じる。見たい。誰だって見続けていたい。
しかし、健全さとは程遠い経営状況がある以上は、いつか危機的な状況に直面する日が来てしまう。今が大丈夫だから、将来的にも何とかなるということはない。
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上層部の迷走はチーム作りにも影響を与えていた。生え抜き選手はどんどんいなくなり、気がつくとシャルケらしさを体現する選手がいなくなっていた。
2部降格が現実のものとなったビーレフェルト戦後、絶望的なチームのなかで誰よりもシャルケのハートを持った伝説の男は、テレビの前で言葉を絞り出していた。元ドイツ代表でもあるOBアザモアだ。
「20年以上このクラブにいる。多くのことを体験し、多くのシーンを見てきた。こうなることは覚悟していた。でもいざその時が来たら……。残酷なものだ」
涙を流し、感情的になり、それでもシャルケの今季を振り返る姿には胸を打たれた。
「順位表の一番下にいて、勝ち点を13しか取れないで、それで『全力を尽くした』と言う者がいるとしたら、私はその人物と何をしたらいいかわからない。このクラブのために、どんなプレーをするべきなのか。それを、どれだけの選手が理解していたのだろうか」
今後シャルケはどうなるのだろう。巨額の負債に加え、2部リーグではいままで以上に人件費を抑えなければならない。
シャルケには最大の武器、アカデミーがある
そんなシャルケにある唯一にして最大の武器はアカデミーの存在だ。
エジル、サネ、ノイアー、ヘベデス、マティップ、ドラクスラー……。実に多くの一流選手を輩出している。
「シャルケの魂を体現しているのは、クナッペンシュミーデ(シャルケ育成アカデミーの愛称)。U19を率いるノーベルト・エルゲルト監督は100%このクラブの価値を理解して、選手を人間的にも成長させている」
そんな言葉を聞く。
つまり、シャルケはこれまで以上に自前のタレントに出場機会を与えて、彼らとともに育っていくことが求められている。それしか道はない。加えて、若手育成に長けた手腕を持った監督が必要不可欠になる。