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自主トレも3年後に公表…なぜ山本由伸は“秘密主義”なのか? 理想も「教えるわけないじゃないですか(笑)」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKiichi Matsumoto
posted2021/04/28 11:03
取材でトレーニングのことなどを聞かれて「秘密です」と答えることが多い山本由伸
山本には“秘密”が多い。取材でトレーニングのことなどを聞かれて、「秘密です」と答えることが年々多くなっている。
今年1月の自主トレ公開では、食事面でも新たな取り組みを始めたと明かしたが、「内容は秘密です」とけむに巻いた。
「やってるアピールはあんまりしたくない。そりゃやってるのはやっていますけど、当たり前のことなので」
自身の発言の重さを感じているからでもある。自分の取り組みや言葉の一部分だけが伝わったり、誤って伝えられることを危惧している。
「練習方法にしても、ちゃんと伝えないと、正しくできないので。見よう見まねで真似をするのもいいんですけど、それで怪我をする人もたぶんいると思う。やっぱり発言の力とかもちょっとあると思うので、だから安易に言えない。言うことには責任があるので。直接話せるならちゃんと伝えられますけど、そうじゃないですから」
今や山本は野球少年の憧れで、プロも真似をするほど影響力は大きい。山本のトレーニングが注目され、ジャベリックスローなどが球児の間でも流行している。ただそれは一連のトレーニングの1つにすぎず、それだけで山本のようになれるわけではないし、方法を誤れば弊害が出る恐れもある。
「教えるってことにはすごく責任があると思うので、無責任に教えたりするのは、違うかなと思います。それでその人が怪我をして、一生できなくなる可能性もあるので」
1つだけ教えてくれた“目標”
22歳が背負うものの大きさと、その自覚が垣間見えた。一方で、山本自身は、何も成し遂げたとは思っていない。
「僕の中にはすごくおっきい理想があるので、そこにひたすら向かっていっている。ただそれだけです」
その大きな理想とは?と尋ねた。