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自主トレも3年後に公表…なぜ山本由伸は“秘密主義”なのか? 理想も「教えるわけないじゃないですか(笑)」
posted2021/04/28 11:03
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kiichi Matsumoto
初出:「Sports Graphic Number」2021年3月18日発売号〈若き豪腕に迫る 山本由伸「おっきい理想をこっそりと」/肩書などはすべて当時〉
1年目のオフに2カ月間、矢田のもとでトレーニングに没頭したことで、2年目は身体の使い方やフォームが変わった。当時、山本は「去年はいっぱいいっぱいで投げていたけど、今年はアベレージの球を楽に投げられている」と語っていた。
山本には「手をこうする」とか「足をこうする」といった概念はない。「“体全部で1つ”という感じ」だと話す。
矢田は、山本の好きな釣りに例えて、「全身が、大物狙いの強靭なロッドのようになることを目指している」と解説してくれた。
身体の深部感覚が研ぎ澄まされるにつれ、成績は自ずとついてきた。それでもまだトレーニングは基礎の段階だという。
「やらないといけないと思ったことは、絶対にやるタイプ」
鈴木には、中学時代のやんちゃな山本のイメージが強く、地道なトレーニングをコツコツと継続する姿は意外に映った。
「飽きることなく、こんなに真面目に継続できる。そんな能力があったとは。涼しい顔して、バチッと信念があるんやなあ、と驚かされることがいっぱいあります」
そんな鈴木の言葉を伝えると、山本は「結構昔から、こっそり、ちゃんとやるタイプだったと思いますよ」と笑った。
「やらないといけないと思ったことは、絶対にやるタイプ。意味ないと思ったことは、まったくやらないですけど。必要なものと、意味ないものは、結構決めつけちゃいます」
トレーニングについて聞かれても「秘密です」
しんどいかしんどくないかは関係ない。興味があるかないか、自分に必要かどうかだけ。自分に合うものを見極める嗅覚を持ち、必要だと思うことは、誰に何を言われようとやり続ける。こっそりと。
「別に隠しているわけじゃないんですけど、自然とそうなっちゃってます。そういう性格です。別に、『これやってるよー』って、みんなに言うものじゃないなと思うので」