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「貴様がこんなにも無様な男だとは思わなかったが」 “リーダーではない”内藤哲也と“連合帝国軍広報官”の心理戦
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2021/04/23 11:00
グレート-O-カーン(右)から内藤哲也への罵倒が止まる気配はない
「プロレス界で嫌というほど、挫折を味わわせてやるぜ」
O-カーンと内藤の連日のやり取りは収束の気配さえ感じられない
「残念ながらオレはコンプレックスの塊じゃないから。オレは自分の過去を否定しない。そりゃかっこ悪い過去も沢山あったよ。でも今となってはそんな過去すら、まあいい経験だなあって、思える。それがオレの今の一番の強みかな。逆に、コンプレックスも、挫折も経験してないO-カーン。もしかしたら、今のO-カーンにとって一番の欠点であり、一番の弱点が、それかもしれないね。まあ、でもO-カーン、安心しろよ、これからこのプロレス界で嫌というほど、挫折を味わわせてやるぜ」(内藤)
内藤がそう言うように、内藤は過去を否定していない。むしろ、さらけだしてきた部分もある。
「ユナイテッド・エンパイアの広報さんはやさしいね」
「来週の月曜日(4月26日)、オレのホームである広島大会で、O-カーンとシングルマッチ。負けたらロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのリーダーの座をほかの選手に譲れって、O-カーンが言っていたよ。譲るけど、だって、そもそもオレはロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのリーダーだなんて自覚、ないから。我々ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンに決まったリーダーは存在しない。そのとき先頭を走っている人間が、このユニットのリーダー。つまり、今シリーズのロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのリーダーは鷹木だよ。
実際、入場する順番も鷹木が最後だし、コールされる順番も鷹木が最後だよ。それにしても、我々ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの心配をしてくれたり、内藤の心配をしてくれたり、ユナイテッド・エンパイアの広報さんはやさしいね。でもさあ、そろそろ自分の心配したほうがいいんじゃないの? 新発売のO-カーンTシャツを着たお客様、今日の会場もほとんどいなかったよ。ユナイテッド・エンパイアの広報さんを救う方法、助ける方法、ちょっとオレ、考えとくわ」(内藤)
前日にこう言った内藤は、4月20日の後楽園ホールで奇行に出た。なんと内藤は連合帝国のTシャツを着こんでいた。内藤は客席を見渡してTシャツの数をチェックした後、黒いパーカーを脱ぐと、現れたのは、背中には「連合帝国」、前の部分は「Great-O-Khan」の文字とイラストだった。客席からどよめきが起きた。これは抜群の効果かと思えたが、試合はこの日の8人タッグマッチも連合帝国の勝利だった。