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【フェルスタッペン今季初優勝】セナが見守るイモラでホンダが30年ぶりの勝利 完勝で加速するタイトルへの期待感

posted2021/04/20 11:02

 
【フェルスタッペン今季初優勝】セナが見守るイモラでホンダが30年ぶりの勝利 完勝で加速するタイトルへの期待感<Number Web> photograph by Getty Images

ウェットスタートの難しいコンディションを制し、ホンダに今季初優勝をもたらしたのは、エースのフェルスタッペンだった

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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 第2戦エミリア・ロマーニャGPが開幕する前日、イモラ・サーキットに到着したホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、ピットを離れてタンブレロへと歩を進めた。1994年5月1日に、このイモラで行われたレース中にタンブレロという名のコーナーで事故に遭い、還らぬ人となったアイルトン・セナのモニュメントがコース脇に建てられているからだ。

「木曜日に、会ってきました。去年またはその前と変わらぬ姿のアイルトンに挨拶してきました」

 1981年からサンマリノGPの舞台だったイモラは、2006年を最後にF1のカレンダーから姿を消していた。しかし、コロナ禍でヨーロッパ以外での開催が難しくなった昨年、14年ぶりに復活した。昨年は例年開催されてきた春ではなく11月の開催だったが、今年は15年ぶりに春に開催された。

「かつて、このイモラは春に複数回テストをしていた地で、グランプリも含めると非常に長い期間滞在していたものです。したがって、アイルトンと一緒に仕事をした第2期のメンバーにとっては、イモラの街は馴染み深い場所です。だから、イモラを訪れると、いつもあの時の記憶がよみがえります」

シーズンを占うイモラでのレース

 そのイモラで80年代から90年代にかけてライバルたちを圧倒していたのがホンダだった。当時、イモラはシルバーストン(イギリスGP)、ホッケンハイムリンク(ドイツGP)、スパ(ベルギーGP)、モンツァ(イタリアGP)と並ぶパワーサーキットの一つだった。その中で最初に開催されるイモラでのレースは、そのシーズンの趨勢を占う重要なイベントだった。

 ホンダがそのイモラを最後に制したのが、91年。セナとチームメートのゲルハルト・ベルガーによる1ー2フィニッシュだった。この年、セナが駆るマクラーレン・ホンダはドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権を制した。それ以来、ホンダはイモラで勝つことも、選手権を制することもなかった。

 そのホンダが、F1ラストイヤーとなる2021年、力強いパワーユニットとともにイモラに帰ってきた。レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンは予選でミスを犯して3番手に終わるも、雨が降って難しいコンディションの中、ミスを最小限にとどめ、今シーズン初優勝を遂げた。

 イモラはセナの死後、コースが改修され、かつてのようなパワーサーキットではなくなった。しかも、この日のレースはウェットコンディションだったため、ホンダ・パワーが炸裂したというレース展開ではなかった。

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