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「別人です、別人」14年ぶりVリーグ優勝へ導いた柳田将洋の“変貌”…日本代表主将は交代も「ショックはない。だって石川なら」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2021/04/11 11:00
リーグ優勝に貢献したサントリーサンバーズの柳田将洋。日本代表では主将の座を石川祐希に託す形となったが、「やることは変わらない」とさらなる飛躍を誓った
迎えた今シーズンの開幕戦。柳田は闘争心の塊だった。
コロナ禍の渡航制限の影響で、ロシア代表のムセルスキー・ドミトリーや中国出身の季道帥の合流が遅れたため、サントリーは日本人選手だけで開幕に臨んだが、その中で柳田がチームを牽引した。
ウルフドッグス名古屋から第1セットを先取したが、第2セット途中からWD名古屋はポーランド代表のクレク・バルトシュを起用して流れを変え、サントリーはセットを奪われた。
昨季までなら、そのままズルズルと敗れてもおかしくない展開。しかし柳田は第3セットの開始前、スタートの6人をコートに集めて1人1人のお尻をたたき、「おい!もう一回行こーぜ!」と檄を飛ばした。
強烈なサーブで連続エースを奪うなど、プレーでも要所で得点を決めて流れを引き寄せ、オポジットに入った栗山雅史の24得点に次ぐ23得点を挙げ、開幕戦の勝利に貢献した。
4季ぶりに柳田とプレーしたリベロの鶴田大樹は、試合後こう話していた。
「頼もしいです。プレーもそうだし、めちゃくちゃ声を出して鼓舞してくれる。いいプレーをしたらガッと来て盛り上げてくれるし。なんか外国人みたい(笑)。以前とは全然違う。別人です、別人」
2戦目は柳田がチーム最多得点を挙げ、精神的支柱にもなり開幕2連勝に導いた。ムセルスキーがいない中での連勝スタートは、チームに大きな自信をもたらした。
脱却した“ムセルスキー頼み”
それは昨季までのサントリーに足りないものだった。身長218cmのムセルスキーは、オポジットとして抜群の決定力を持つが、チームはプレーでも精神的にも、ムセルスキーに依存していた。昨季終盤、ムセルスキーが怪我で離脱すると、下位のチームに3連敗。ムセルスキー頼みは否めなかった。
今季は、ムセルスキーがいない中でWD名古屋に連勝できた自信が、シーズンを通して、劣勢でも崩れず、接戦に競り勝つ原動力となった。
柳田自身は、半年近くに及ぶ長いリーグの中盤、モチベーション維持の難しさを漏らしたこともあった。
「リーグが続く中で、悪い意味で習慣化して、刺激がなくなってきているのはよくない。自分の中で刺激を与え続けていかないと。海外では、ああしてくれ、こうしてくれ、なんでこうしないんだという、周りからの注文がすごく多かった(苦笑)。それに自分が反応したり、言い合ったり。エゴイストがたくさんいるような感じだった。
とがり方は(日本とは)やっぱり違ったし、いつも緊張感を持って、自分も何か言われる、いつ追い詰められるかわからないというプレッシャーを感じながらやっていた。今ももちろんありますけど、明らかに海外とここでは、立場だったりいろんなことが違うので、ここでの刺激というのは、自分の中で見つけていく必要があるのかなと思います」
そう語っていたが、そんな時ギアを上げるきっかけにしたのは、自分の目標を見つめ直すことだった。