ボクシングPRESSBACK NUMBER
“泥酔事件”王者・寺地拳四朗に“2度ドタキャン”された男、久田哲也36歳がついに挑戦「正直、舌打ちしたい気持ちでしたけど…」
text by
芹澤健介Kensuke Serizawa
photograph byKensuke Serizawa
posted2021/04/23 11:01
1年半ぶりの実戦に「歳は取りましたがそのぶん練習できました」と語る久田
これは“事件”を知った直後の久田がSNSで吐いた一言。実は、久田にとって、寺地のドタキャンは初めてではなかった。
前回のキャンセルは興行の10日前だった
「最初に一方的に試合をキャンセルされたのは、2017年の日本タイトル戦の時です。あの時は今回よりひどい。興行の10日前ですよ。あり得ないでしょう、ほんまに」
久田が所属するハラダジムの原田剛志会長(52)は怒りを隠さない。
当時、久田はすでに32歳だったが、「絶対チャンピオンになる」と必死の思いでトーナメントを勝ち抜き、第39代日本ライトフライ級王者だった寺地への挑戦権を獲得。だが、その思いは試合直前に挫かれた。寺地サイドが突然、日本王座を返上したのである。寝耳に水だった。
「急に世界戦が決まったからだと聞かされました。でも、こっちは納得できませんよ。向こうも試合直前の選手がどれだけ苦しい思いをしてるかわかってるだろうに」(原田会長)
久田の通常体重は約57kg。そこから8kgほど絞って、ライトフライの規定体重である48.98kg以下に仕上げる。ボクサーの減量は過酷だ。
試合の10日前といえば、そろそろスパーリングなどのハードな練習は終え、これから追い込みの体重調整をしようというタイミングである。久田はそこでいきなり梯子をはずされたわけだ。試合は中止。チケットもすべて払い戻された。寺地サイドからは一言の謝罪もなかった。
「正直、舌打ちしたい気持ちでしたけど、すぐにランキング2位の堀川(謙一・三迫)さんとの試合が決まったので頭を切り替えました」(久田)
3週間後、空位となった王座を賭けたタイトル戦が行われ、久田は第40代日本ライトフライ級王者の座に就いた。一方の寺地は、WBC世界ライトフライ級王者のガニガン・ロペス(メキシコ)と対戦、12Rを戦って2-0の判定勝ち。そして、この時から4年。今、寺地は防衛7度の世界王者として久田の前に立ちはだかっている。