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前田健太&ダルビッシュ有は“非情の交代”か? “開幕投手”の難しさと見事だった「2003年の野茂英雄」
posted2021/04/05 18:10
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
日本人初の同日開幕投手。
メジャー6年目。米国で初の栄誉ある役割を務めた前田健太はブルワーズ相手に4回1/3を6安打、2失点。勝敗は関係なかった。
4年ぶり2度目の大役となったダルビッシュ有はダイヤモンドバックス相手に4回2/3を8安打、4失点。こちらも勝ち負けはつかなかった。
チームがリードを保ち、勝ち投手の権利まで前田があとアウト2つ、ダルビッシュはあと1つと迫りながらの交代。球数も前田が88球、ダルビッシュは93球。まだ余力も残している状態だった。日本の野球に慣れている方々からすれば、『非情の交代』と映っただろう。
事実、筆者の耳にも日本からこんな声が聞こえてきた。
「開幕投手に指名しながら、勝ち投手の権利目前での交代は理解できない。怪我でもあったのか?」
開幕投手に対する日米の考え方の違い
確かに日本的な感覚からすれば、チームの柱に指名した投手には、自身で”白黒”をはっきりつけるまで投げてもらうという考え方はある。だが、米国はちょっと違う。明確に存在しているのは、開幕投手であっても、投球数できっちりと線を引くということだ。現場で取材していた日米の記者の中にも、前田とダルビッシュに交代場面での心境を聞いた者は誰もいなかった。
「開幕戦ということであまり球数を投げることができなかった。いい投球ができなかったのは悔しい」とは前田。
ダルビッシュは5回の降板前にジェイス・ティングラー監督が一度マウンドまで来たものの続投。そのことについて聞かれ、こう言った。
「代えるのかなと思ったんですけど、監督が代えると言った時はどんな時でも代わる準備は出来ている。ただそこで、『大丈夫か?』と言ってくれたところにすごく信頼を感じたし、感謝しました」
ダルビッシュはその後に2点本塁打を許し降板。期待に応えられなかった自身に不甲斐なさを感じているようだった。