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なぜ天理・達孝太のストレートは分かっていても打てない? 「角度が1度違う」だけで…【センバツ注目右腕】
posted2021/03/30 17:02
text by
間淳Jun Aida
photograph by
JIJI PRESS
2つの角度がある。
1つは7度。もう1つは8度。目視でその違いが分かる人は、ほとんどいないだろう。分度器を使って目を凝らして、ようやく把握できるほどの小さな差だ。だが、たった1度の角度の違いが、マウンドでは大きな差を生む。
今大会指折りの投手である天理・達孝太の武器は、最速148キロのストレートと落差のあるフォーク。3年生の通算本塁打が242本の強打・健大高崎を2安打で完封するなど、今大会は3試合で計26回を投げて4失点(自責3)、防御率1.04の好成績を残している。
達本人も自覚している課題は、四球でピンチを招く制球である。
仙台育英との準々決勝では7つの四球を与え、自己採点は「0点」だった。変化球でストライクが取れず、選択肢はストレートしかない苦しい投球。達は「ストライクを取りにいって、バッターには打ってくれという感じで投げていた。よかったところは何もない」と猛省した。
中村良二監督も「あんなピッチングするんだというくらいよくなかった」と驚く内容。捕手の政所蒼太も「変化球でカウントが悪くなるのが嫌なので、どんどんストレートでいこうと思った」と振り返るほどだ。
タイミングを合わせたはずが空振りやファウル
当然、仙台育英の打者はストレートに的を絞って打席に入る。だが、達を打ち崩せない。タイミングを合わせてスイングしたはずが空振りやファウルとなり、打ち返してもなかなか外野を越えなかった。大会屈指の打線でも、絶不調の達から3点(自責点は2)を取るのがやっとだった。
仙台育英は「仮想・達」で対策を練ってきた。140キロ台後半のストレートを弾き返せるよう、身長185センチの投手がマウンドの2メートル手前から打撃投手を務めた。