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なぜ天理・達孝太のストレートは分かっていても打てない? 「角度が1度違う」だけで…【センバツ注目右腕】 

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間淳

間淳Jun Aida

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photograph byJIJI PRESS

posted2021/03/30 17:02

なぜ天理・達孝太のストレートは分かっていても打てない? 「角度が1度違う」だけで…【センバツ注目右腕】<Number Web> photograph by JIJI PRESS

高いリリースポイントから投げ下ろす達孝太のピッチングは、相手打者を幻惑する

“速いだけの球”ではない角度が

 近年の高校野球では、140キロを超えるストレートを投げる投手は少なくない。そして、打撃マシーンやウエイトトレーニング場など練習環境が整い、バッティングの技術は向上している。"速いだけの球"であれば、打ち返す力は十分にある。

 それでも、攻略できない達のストレート。最大の理由は「角度」だ。

 達の身長は193センチ。高い位置からボールを投げ下ろすため角度が付き、バットの軌道に面する範囲が小さくなる。敗れた仙台育英の島貫丞主将は対戦前に「対戦のイメージはできた。ボールに角度があるので目線を上げないで、ボールをしっかり見極めたい」とポイントを上げた。しかし、実際の達の投球は見極めが難しく「高めのボールを打ち上げてしまった。チームで徹底していたことができなかった」と敗因を語った。

193cmの達と173cmの投手では“30cm”の差

 健大高崎は、この「角度」の対策を講じて達との対戦に臨んだ。打撃投手を台の上に立たせ、達のストレートをイメージして練習したが、結果はわずか2安打。無安打に終わった4番・小沢周平主将は「生きたボールは違った。ストレートをフルスイングしていこうとベンチで話したが、そのストレートで上回られた」と完敗を認めた。青柳博文監督は達を攻略する難しさを、このように説明した。

「長身から投げ下ろす角度。他の投手とは角度が違い、高めのボール球に手を出したり、フライを打ち上げたりしてしまう。角度がある投手は練習のしようがない。台を使って高いところから投げさせる練習もしたが、経験値が足りない。そのストレートにフォークも素晴らしいと、上下の配球に手も足も出なくなる」

 では、達と他の投手では、どれほど角度が違うのか。例として、身長193センチの達と、173センチの投手がマウンドに立った場合を比較してみる。

 一般的に身長が高い人の方が腕は長くなる。ここで達の腕の長さは95センチ、173センチの投手の腕は85センチと仮定する。オーバースローかスリークウォーターかなど投球フォームによる差はあるが、身長と腕の長さの差を合わせた30cmが、リリースポイントの高さの違いとなる。

【次ページ】 わずかな角度の差でもフォークが加わると……

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