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球速147キロ→140キロ弱までガクンと落ちて…注目度ナンバー1右腕・小園健太に何が起きたのか?【センバツ】
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKYODO
posted2021/03/27 17:45
7回表、明豊の代打竹下(右)に決勝打を打たれ、マウンドで苦笑いを浮かべる小園
市和歌山は、バッテリーを組む「3番・捕手」の松川虎生のタイムリーで1−1の同点とした。その瞬間、小園はベンチで両腕を突き上げた。
エースが登場し、中心打者の働きですかさず追いついた。両輪がそろい、さらに勢い付くかに思われた。
ところが、順風となる要素が、小園にとっては逆風となってしまった。
「(ここから先は)絶対に先に点を取られてはいけないというプレッシャーがあって、ストライクを取るのに苦労してしまった。同点になったのに変に気負って、自分勝手なピッチングをしてしまった」
同点直後の7回表、2アウト三塁のピンチで、小園は、高めに浮いた125キロのスライダーをレフト前に運ばれ、1−2と勝ち越しを許す。甲子園で許した初めての失点でもあった。小園は、その瞬間、マウンド上で苦笑いを浮かべた。
「あそこは三振を取らないといけない場面。泳がせても、あそこに運ばれたのは、自分のスライダーがまだまだと思いました」
小園は2つの甲子園を味わったという。
「とても素晴らしいところであると同時に、とても怖い場所だとも思いました」
先発の米田が初回、1アウト三塁のピンチを切り抜け、ベンチに戻ると、小園は左手を米田の肩に回し、こう諭した。
「普通にやったら抑えられるから、安心して投げろと言ってあげました」
後輩にかけてやれた言葉を、自分にはかけてやれなかった。
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