3番・新川俊介。またも、初球だった。外寄りのチェンジアップをとらえた。打球はライトからレフトへ強く吹く風に乗ってレフトスタンドへ。九州大会で完封された左腕から得点し、すぐに同点とした。

　追いつかれた福岡大大濠は直後の2回。1アウトから、毛利が左中間を破る三塁打で出塁した。続く8番・松尾光気の打球は高く上がってセンターへ。強烈な風に戻されて、センターとショートの間にポトリ。甲子園の浜風が今度は、福岡大大濠に味方した。

福岡大大濠バッテリーは2回から配球を大きく変えた

　風は自分たちで引き寄せる。

　1点のリードをもらった毛利と川上のバッテリーは2回、配球を大きく変えた。先頭打者の具志川商・粟国を3球連続カーブで追い込み、ストレートで空振り三振。続く比嘉力太にも104キロのカーブで入り、最後は134キロのストレートで空振り三振に斬った。ストレートを狙う具志川商打線の裏をかく配球で、主導権を握ったかに見えた。

「色んなデータを見て初球からエンドランを含めて、どんどん仕掛けて相手にプレッシャーをかけていかないと、チャンスはこじ開けられない。得点のチャンスは低いと見ていたので」

　具志川商の喜舎場正太監督はこう話していた。その言葉通り、流れを引き寄せようと、毛利を足で揺さぶる。3回1アウト一塁で1番・大城の場面のことだ。

　けん制球で警戒するバッテリーに対し、カウント1ボール1ストライクから2球連続でエンドランを仕掛けた。どちらもファウルになった後の5球目。大城は高めに浮いたストレートを左中間に弾き返すタイムリー。足を使って、打者に100％集中できない状況を作り出した結果だった。

相手を知るがゆえの駆け引きは、まだまだ続く

　相手を知るがゆえの駆け引きは、まだまだ続く。

　スコアは4―4。風が再び強くなり始めた8回の攻防だ。

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