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「お粗末、無能な議員どもだ!」 サッカーの聖地マラカナン改名騒動に功績者の孫が痛烈批判…怒りに震えるワケ
posted2021/03/20 11:01
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Takuya Sugiyama
「何という馬鹿げた決議をしたのだろう!全くお粗末な議員どもだ!」
電話の向こうで、野太い声がリオ訛りでまくし立てる。
マリオ・ネット氏、73歳。マラカナン・スタジアム建設に多大な功績があったマリオ・フィーリョの孫で、自身も長年、フットボール・ジャーナリストとして活躍した。
1950年ワールドカップ(W杯)に材を取った「マラカナンの悲劇」(2014年に新潮社より刊行)を書くため、2010年代前半、僕はコパカバーナにある彼の瀟洒なマンションを訪ねて話を聞いた。
当時の住所録を引っ張り出してあまり期待せずに電話したところ、すぐに本人が電話に出てくれて、逆に驚いた。僕のことも覚えてくれていた。
悲惨な状況を押し隠そうと、こんな浅はかなことを
――3月9日にリオ州議会がマラカナン・スタジアム改名の決議を可決して以降、多くの人が憤慨し、州知事に決議を承認しないことを求めています(注:3月24日までにリオ州知事が改名するか否かを最終判断する)。
「議員連中の意図は、明らかだ。昨年来、リオでは新型コロナウイルスが猛威を奮い、医療崩壊が起きている。経済状況は最悪で、治安も相変わらず悪い。そんな悲惨な状況を押し隠そうと、こんな浅はかなことを思いついたのだ。そんなことをする暇があったら、この状況を少しでも改善するため、必死に知恵を絞って働くべきであるにもかかわらず」
――議員たちは、ジャーナリストとしてスタジアムの建設の重要性を説いたマリオ・フィーリョの功績を正しく理解しているのでしょうか?
「全くそうとは思えない。ブラジルのフットボールの歴史を知らないということは、ブラジルの歴史を知らないということ。恐ろしく無知で、不勉強な連中だ。とりわけ、元選手のベベットが賛成票を投じたことに驚きかつ呆れた」
――もしマリオ・フィーリョが生きていたら、この騒動をどう思ったでしょうか?