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「お粗末、無能な議員どもだ!」 サッカーの聖地マラカナン改名騒動に功績者の孫が痛烈批判…怒りに震えるワケ
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/03/20 11:01
かつてのマラカナン全景。その独特なフォルムで愛された
「選手としてのペレはもちろん、彼の人間性も熟知しており、『あれほどの選手は、もう二度と出てこないだろう』と話していた」
偉大な選手なのは疑いない。しかし、そもそも……
――あなたのペレへの感情や思いは?
「もちろん偉大な選手であり、そのことに疑いはない。しかし、そもそもこのスタジアムがなければ、彼はここでプレーすることはなかった。だから、彼の名前を付けるのは筋違いだと言っている」
――今回の改名騒動について、当面、ペレは何もコメントしていません。
「彼は、すでにありとあらゆる賛辞とオマージュを受けている。このスタジアムに名を残すことに拘泥するとは思えない」
――ただ、実際に改名するかどうかを決めるのは、クラウジオ・カストロ州知事です。あなたは、彼がどのような判断を下すと思いますか?
「私は、政治家としての彼を全く評価していない。リオが現在のような惨めな状況にあるのは、彼の責任が大きい。それゆえ、無能な議会議員たちと同様、彼も現在のリオの悲惨な状況を覆い隠そうとして、改名を認める可能性が高いと考えている。この件に限って、彼が良識を発揮することは考えにくい」
――スタジアムを改名してマリオ・フィーリョの名前を除外した場合は、彼の名をマラカナン地区のスポーツ・コンプレックスの総体を表わす名称として残すようです。
「お門違いもいいところだ。祖父は、スポーツ・コンプレックスではなくスタジアムの建設を訴えたのだ」
――この件は、日本を含む世界各国のメディアでも報じられています。
「そのようだね。世界中の多くの人が関心を示しており、そのことが、このスタジアムがブラジルのみならず世界のフットボールの重要な歴史的遺産であることを示している」
批判精神に富んだ血筋が脈々と流れていた
彼の一族には、批判精神に富み、斬新な発想をするジャーナリストや著述家が多い。マリオ・ネット氏にも、その血が脈々と流れていた。
彼も語っているように、今、リオは、そしてブラジルはあらゆる意味で最悪の社会状況を迎えている。「昨年来の失政を糊塗し、州民、市民からの批判をかわすためにこのような馬鹿げた決議をしたのだ」という主張には説得力を感じた。
また、スタジアム建設の経緯を振り返ると、あれほど顕著な功績があった人物を、建設から70年以上の歳月がたったからとはいえ、忘れていいことにはならないのではないか――。