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【現役引退】ダン・カーターは“ええかっこ”をしないから神戸で愛された 世界トップの司令塔の人柄に触れた2年間 

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倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)

倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)Yohei Kuraseko

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posted2021/03/08 11:03

【現役引退】ダン・カーターは“ええかっこ”をしないから神戸で愛された 世界トップの司令塔の人柄に触れた2年間<Number Web> photograph by Getty Images

2月20日に自身のインスタグラムで現役引退を発表した元ニュージーランド代表SOダン・カーター。日本でも華麗なプレーと飾らない言動でファンを魅了した

手術は「怖かったよ」、練習はいつも最後

 首の手術をして迎えた昨シーズンの開幕前には「脊髄の手術は正直、怖かったよ」と素直な思いも口にした。プレースキックの自主練を終えて、練習を引き揚げるのは、いつも最後。日が沈みかけたグラウンドで、暑かろうが寒かろうが、彫りの深い顔に優しい笑みを浮かべながら、メディアに丁寧に対応してくれた。

「引退前の最後の出稼ぎ」なんていう周囲の雑音も、その振る舞いからは微塵も感じさせなかった。積極的にチームに溶け込んでいた。シーズン中、大阪難波のジンギスカン料理店で開催された神戸製鋼のOB会に出席し、V7以前のメンバーの昔話に耳を傾ける勤勉さには驚いた。

コメンテーターとしても有能?

 19年W杯日本代表候補について、スポニチの企画で18年12月にインタビューをした時もまた驚いた。

 No.8姫野和樹、SO田村優、FB松島幸太朗、SH流大、惜しくも代表から漏れたCTB梶村祐介の特徴までも、スラスラと口にしたのだ。トップリーグで1度でも対戦していたなら知っていて当然、と言えば、そうかもしれない。しかし、過去の様々な外国選手への取材では、日本選手の顔と名前が一致しなかったり、あまり覚えていないというケースが多かった。「答えをうまく引き出せるだろうか」と多少の不安を抱えながら取材は始まったが、カーターには要らぬ心配だった。

 各選手を初めて見た時の印象も、対戦して感じたことも、W杯への展望も、プレースタイルに応じて、切り口を変えて語ってくれた。対戦していない田村も、こちらが用意した映像を見せるまでもなく、ニュージーランド代表の仲間を通じて、プレースタイルを把握し、試合もチェックし、情報をインプットしていた。名選手は名コメンテーターでもあった。

【次ページ】 後輩へ宛てた「リスペクトを勝ち取れ」

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