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三浦知良が54歳に 「空港でスーツびしょ濡れ」傷ついた城彰二にキングカズが伝えた“ある言葉”とは?
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJIJI PRESS
posted2021/02/26 06:01
本日2月26日は三浦知良の54回目の誕生日だ
国内トップリーグでプレーしている同年代の選手は、日本はもちろん世界を見渡してもカズしかいない。もうずいぶん前から、自分に近い立場の選手と悩みを分かち合えなくなっている。誰も歩いたことのない標なき道を、それも進むほど険しくなっていく道を、彼はたったひとりで切り開き、いまこの瞬間も一歩ずつ前進しているのだ。
どこまでも自分に厳しいのは、まさにプロフェッショナルのメンタリティである。さらに加えてカズは、自分ではコントロールできないものに対しても、プロフェッショナルで在り続けるのだ。
ファンに水をかけられた城彰二に……
時計の針を1998年に戻す。
6月から7月にかけて行われたフランスW杯で、日本代表は3戦全敗を喫した。アルゼンチンとクロアチアに0対1で敗れ、ジャマイカとの最終戦も1対2で屈した。W杯初出場の熱波がすさまじいものだっただけに、リバウンドとしての落胆も大きかった。
フランスから帰国した成田空港で、ちょっとした事件が起こった。城彰二がファンから水をかけられたのだ。
直前でメンバーから落選したカズに代わって、当時23歳の城は岡田武史監督からFWの軸に指名された。しかし、全3試合に先発したノーゴールに終わっていた。
スーツを水で濡らした城は、無言でその場を立ち去った。反論の言葉を口にしなかったものの、やりきれなさはもちろんあっただろう。
人知れず傷ついていた彼の心に、そっと寄り添ったのがカズだった。
「水をかけられたことを知ったカズさんが、すぐに電話をくれたんです。『良かったな、日本のエースとして認められた証拠だよって言うんです。オレなんて生卵は投げられる、石も投げられる、パイプ椅子は飛んでくるで、大変だったよ』って。それを聞いて、カズさんは計り知れないプレッシャーを背負って、たったひとりで戦ってきたんだということに気づかされたんです」