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風雲児バウアーと王者ドジャース。超豪華投手陣とダルビッシュら大型補強パドレスの対決は必見
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2021/02/13 11:00
2月5日に自身のYoutubeチャンネルでドジャースとの契約を発表。昨年11月にレッズから提示されたクオリファイング・オファーを拒否していた
となると、ここでどうしても引き比べたくなるのは、同じナ・リーグ西地区に属するパドレスだ。パドレスは昨年末、ブレイク・スネルとダルビッシュ有をトレードで獲得し、これまた強力無比な先発投手陣を形成した。新加入の左右両エース以外にも、ディネルソン・ラメット、クリス・パダック、ジョー・マスグローヴと駒がそろう。マニー・マチャド、フェルナンド・タティースJr、ウィル・マイヤーズらの居並ぶ打線も、けっしてドジャースに見劣りしない。
シーズンの開幕はだいぶ先のことだが、今季はこの両チームが、何度も直接対決を繰り返してくれるわけだ。これは楽しい。いまから気分が高揚する。
ひるがえって考えてみると、ドジャースが巨額の資金を投じてもバウアー獲得に固執したのは、パドレスの大型補強を目の当たりにして危機感を覚えたからではないか。バウアーのドジャース入団で、両者の力関係はふたたびドジャース有利に傾いたかに見えるが、この勝負はまだまだわからない。
そもそも、いま名前を挙げた選手たちが、全員つつがなく一年を過ごせる保証がない。故障の不安はもとより、メンタル面の不安定さが露呈される可能性もあるし、ビッグネームを集めたチームは、得てして摩擦を起こしたり名前負けしたりしがちだ。
漁夫の利を得たのはパドレスかもしれない
そんななかでうがった見方をすると、ドジャースのバウアー獲得で膝を打っているのはむしろパドレスではないか、という気がしてくる。バウアー対ダルビッシュ、カーショー対スネル、ビューラー対ラメット。サンプルを並べただけでも、必見のカードがつぎからつぎへと浮かぶ。
これが少しずつずれても、ビューラー対ダルビッシュ、バウアー対スネルという好勝負が目白押しだ。サンディエゴの野球熱は確実に上がるだろうし、球場の観客動員数やテレビの視聴率もまちがいなく跳ね上がる。
その意味では、風雲児バウアーにはいっそ悪役を演じてもらいたい。そのほうが、今季の大リーグは面白くなりそうだ。謀略を好む富裕層(ドジャース)が、一本気な新興勢力(パドレス)の前に立ちはだかり、なにかと意地悪な妨害工作をするという構図。ギャング映画を彷彿させるような形で長期戦が展開されたら、大勢のファンがペナントレースから眼を離せなくなるにちがいない。