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風雲児バウアーと王者ドジャース。超豪華投手陣とダルビッシュら大型補強パドレスの対決は必見
posted2021/02/13 11:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
トレヴァー・バウアーが、ドジャースと契約を結んだ。
やっぱりという気持と、そう出たかという気持が交錯している。ドジャースはどこまで補強する気か、とも思うし、契約条件はどんなものだったのか、とも思う。
後者については、すでにくわしく報道されている。3年契約の総額1億200万ドル。内訳は、2021年が4000万ドル、22年が4500万ドル、23年が1700万ドルで、1年目と2年目にそれぞれオプトアウト(契約破棄)する権利が付いている。
単年史上最高年俸の価値
これまで、投手の最高年俸はゲリット・コール(ヤンキース)の3600万ドル(20~28年の9年契約で、総額3億2400万ドル)だった。単年でいうと、バウアーは史上最高の年俸を手にすることになる。しかも、オプトアウトの権利付きだ。場合によっては1年後、もしくは2年後に別の球団と新規契約を結ぶ可能性もなしとしない。
ちょっと高いな、という感想が反射的に浮かぶ。なるほど、バウアーは2020年ナ・リーグのサイ・ヤング賞投手だ。この数年で目覚ましい成長を遂げ、ウォーク・イヤー(FAの権利を獲得する年)にきっちり結果を残したことは高く評価されるべきだろう。昨年のWHIP(0.79)や防御率(1.73)は素晴らしいし、速球の回転数(2817rpm)も大リーグ随一だ。南カリフォルニアに生まれ育ち、サンタクラリータの高校を出て、UCLAに進学した経歴を見ても、ドジャースへの入団は故郷に錦を飾る気分だろう。
ただ、気になる点もないではない。バウアーは、SNS(フォロワーが80万人ほどいるらしい)を使っていろいろセルフ・プロモーションを行っているといわれる。「サイ・ヤング賞は俺だ」と主張したことも記憶に新しい。私が古くさいのかもしれないが、自己宣伝の巧みさは、野球に本来備わる温厚や謙虚といった側面と相容れないような気がする。
それでも、ドジャースは彼の能力を買ったのだろう。贅沢税の支払いも厭わず、バウアーに大金を投じた。その結果、先発投手陣は豪華きわまりない顔ぶれとなった。
クレイトン・カーショー、ウォーカー・ビューラー、デヴィッド・プライス、フリオ・ウリアス。これだけでも十分なのに、バウアーが加わり、若手のトニー・ゴンソリンやダスティン・メイにも上積みが期待できる。ワールドシリーズ連覇へ向けて万全の構え、という以上に「王朝継続」の強い意志が感じられる。