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「ボロボロだった」1年前と対照的…大坂なおみ、余裕の全豪初戦突破 他選手の“嫉妬”にも動じなさそうな理由
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2021/02/08 18:30
パブリュチェンコワは初戦の相手とすれば難敵だった。それでも軽やかに勝った大坂なおみに、進化した強さを感じる
昨年、パンデミックによるツアー中断は半年弱の期間だった。復帰戦から好調に勝ち進み、棄権し、グランドスラム大会を迎えるという状況は全米オープンと同じだ。
しかし今、人々が大坂を見る目はあのときとは随分違う。
2年前のこの場所でグランドスラム2大会連続優勝を果たし、ランキングでも頂点に上り詰めた大坂が、それから1年以上もの間、どう苦しんだかはもう随分と語られてきたが、大坂は聞かれれば何度でも繰り返して穏やかに答える。
「ああ、みんな私をNo.1として見ていないんだ」
前哨戦での会見ではこんな話をしていた。
「(世界1位になったあとの)インディアンウェルズで誰かに聞かれたの。ドローのどっちサイドに入っているのかって。ナンバーワンはいつも一番上なのに。ああ、みんな私のことをナンバーワンとして見ていないんだって思った。それからは1位の力を証明しようと思ってがんばったけど、その考え方が良くなかった」
ディフェンディング・チャンピオンとして臨んだ昨年の全豪で敗れた相手は、当時まだ15歳のコリ・ガウフ。ショックも癒えずに迎えたフェドカップでの経験についても語った。プレーも心もまさにボロボロになって、はるか格下相手に敗れた敵地スペインでのフェドカップのことだ。
「あの頃はいろんなことがあって、自分の人生について考えさせられた。私はなぜテニスをしているのか、誰かに何かを証明するためなのか、自分が楽しくて喜びを得たいからなのか……」
その問いかけが何をもたらしたかは、半年後の大坂の復活を見れば明らかだ。テクニック的にもメンタル的にも多くのものを克服したかに見える今の大坂は、チャレンジングな要素を見つけることのほうが難しい。
“特別扱い”と嫉妬する他選手の視線にも動じないはず
昨年の9月から試合をしていなかったといっても、他のトップ選手の多くも10月の全仏オープンが最後で、さほどのハンディはない。オーストラリアに入ってからの隔離期間を過ごしたアデレードは、大多数の選手が過ごしたメルボルンに比べて環境が恵まれていたといわれる。
アデレード組の男女10人のトッププレーヤーには、チームの帯同人数が制限されていなかった。フルメンバーを帯同する大坂にとって、過ごした時間が長い分だけ結束が強まっていくチームの存在は力強い。こうした「特別扱い」に他の選手から不満の声も聞こえたが、今の大坂も含めてトッププレーヤーたちのメンタルは、嫉妬の視線に動じるほど繊細ではないだろう。