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W杯ノルディック複合、日本人最多優勝へ 渡部暁斗が見出した「上達する喜び」
posted2021/01/31 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
JIJI PRESS
ひとつの大きな記録が生まれた。
1月24日、フィンランド・ラハティで行われたノルディックスキー・コンバインド男子のワールドカップ個人第8戦。この試合で渡部暁斗がワールドカップ計19度目の優勝を遂げたのである。
これは荻原健司に並び、日本選手最多タイとなる優勝でもあった。
渡部は昨年5月、32歳の誕生日を迎えた。
その経歴は華やかだ。
高校生で出場した2006年のトリノを皮切りに、2018年の平昌までオリンピックに4大会連続出場を果たす。2014年のソチ、そして平昌のノーマルヒルでは銀メダルを獲得している。
ワールドカップの成績こそが強さの証左
オリンピックのメダルもさることながら、真骨頂はワールドカップで残してきた成績だ。
2011-2012シーズンの個人総合で2位となったのを皮切りに、2018-2019シーズンまで、実に8シーズン連続で3位以内を記録。2017-2018シーズンには、個人総合優勝を成し遂げている。
ワールドカップの総合順位はオリンピックより価値があると考えるスキーヤーは少なくない。海外ではなおさらそうだ。渡部は以前こう語っていた。
「ワールドカップの総合成績は、選手や関係者にはすごさや意味は分かるし、自分の中でもそれがいちばんという揺るぎないものがあります。自分が納得するためというか、納得させるためには必要です」
ただ、本人に満足はない。
象徴的なのは、ワールドカップ総合優勝を果たしたあとの2018年5月の言葉だ。全日本スキー連盟による表彰の場で語った。
「やっぱり競技をそんなに知らない方には、あまり伝わらなかったかなという印象があります」
だからオリンピックでの金メダルを志してきた。オリンピックや世界選手権での優勝を目標に据え、言葉でもたびたび発してきた。
しかし頂点にはまだ届いていない。