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【黒田を超える?】田中将大は日本で再び結果を出せるか NPB復帰1年目で2ケタ勝利の先発は4人だけ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/01/29 11:04
楽天復帰が決まった田中将大。広島時代の黒田博樹のような存在感を見せるか
1つは、田中が2020年の単年年俸で2300万ドル(23億円超)という高額年俸だということ。実績的には田中よりもやや上のカブス・ ダルビッシュ有とほぼ同額。田中と同い年のツインズ前田健太の312.5万ドル(約3.2億円)の約7倍だ(前田健太には他に出来高報酬あり)。
2020年最多勝、サイ・ヤング賞投票で2位になったダルビッシュはパドレスに移籍が決まったが、田中へのオファーがなかった背景には「割高感」があったことは否めない。
年俸総額でMLB30球団の頂点に立つヤンキースは、田中ら主力選手を厚遇したが、これが今年の田中の場合はかえって裏目に出た印象がある。またヤンキースは「贅沢税」の関係で、田中との契約に躊躇したという事情もある。
トミー・ジョン手術を選択しなかった田中
もう1つは、田中に“古傷”があるということ。田中は移籍1年目の2014年7月、右ひじの違和感を覚え故障者リスト入り。靭帯の部分断裂が見つかった。アメリカではこのケースではほぼ間違いなく靭帯の付け替えを行うトミー・ジョン手術を選択する。
NPB出身投手でも松坂大輔、和田毅、ダルビッシュらはトミー・ジョン手術を行った。大谷翔平も同様だ。しかしこの手術から完全に復帰するまでには、1年半の時間がかかる。それもあって田中はこの手術を選択せず、PRP療法で治療をした。
この治療は自分の身体から採取した多血小板血漿を患部に注射し、自身の治癒力で患部を癒すというものだ。PRP療法は日本でもアメリカでも普通に行われている安全な治療法だ。ただしトミー・ジョン手術のような劇的な回復は期待できないとされる。
この年7月8日の登板を最後に故障者リスト入りした田中は、PRP療法を受けて9月21日に一軍復帰を果たした。つまり2カ月半で復活したのだ。
戦線離脱せずMLBで投げ続けてはきた
以後、田中は大きな戦線離脱をすることなくMLBで投げ続けてきた。右ひじ靭帯は悪化していないと思われるが、古い靭帯のままで投げ続けてきたために「そろそろ限界ではないか」という声が聞こえてきているのだ。