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鉄棒に専念した内村航平にも可能性が? 東京五輪、体操団体総合の代表選考基準が変更へ
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKYODO
posted2021/01/17 17:00
昨年12月の全日本選手権、内村は種目別の鉄棒に出場し、優勝。
ここ3年の世界選手権金メダルに相当する得点
9月の全日本シニア選手権こそ、14.200点で6位にとどまったが、3つ目の大会となった12月の全日本選手権で圧巻のパフォーマンスを披露する。
まず、予選で15.533点という高得点をマークし、トップで決勝に進出。決勝でもH難度の大技「ブレトシュナイダー」を成功させるなど技を次々に決め、15.700点とさらに得点を伸ばして優勝を果たしたのである。この得点はここ3年の世界選手権金メダルに相当するものであった。
「内容はあまりよくなかったです」
予選から来る疲労を感じての演技に、納得はいかなかったようだが、それでも十二分に内村の存在感を示す場となった。
「他をやることで動きやすくなります」
着実に鉄棒で上昇気流にのった内村だが、昨夏、「6種目やりたい思いも1、2パーセントはあります」と心中を語ってもいた。総合に長年こだわってきただけに、偽りのない思いだっただろう。
実際、11月の国際大会では鉄棒以外の種目にも出場している。そのとき、鉄棒でよい演技をする手掛かりをつかんだ。それは「完全に専念しないこと」だった。
いきなり鉄棒の演技を迎えた全日本シニアではミスが出たが、国際大会では他の種目の後に鉄棒という順で、大技を決めるなどした。その経験から、「結局はオールラウンダーなんだと感じました。他をやることで動きやすくなります」と捉え、「個人総合のつもりで鉄棒をやる」という発想が浮かんだ。つまり鉄棒のために他の種目もやろうと考えた。
ただ全日本選手権では1種目目に鉄棒という順番を引いたことで計画通りにはいかず、鉄棒のみとなったが、「結局はオールラウンダー」という再発見の意味は決して小さくはない。
そして今回、あらためて団体総合に可能性が生まれることになった。