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【前田遼一引退】“谷間の世代”と呼ばれて…あえて「暁星→ジュビロ」を選んだ“不器用な男”の21年間
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byToshiya Kondo
posted2021/01/16 11:02
14日、現役引退を発表した前田遼一
「移籍をして、サッカーはひとりじゃできないんだなと強く感じた。そして、ここでもまずはチームプレーを考える。組織の歯車になって、そのうえで、僕にしかできないことをやっていきたい」
移籍加入時にこう語り、それが自身のプレーの幅が広がるきっかけになるだろうとも話した。
そのFC東京からJ2のFC岐阜へ移籍し、J3でもプレーしたが、コンディション調整に苦慮し、怪我にも悩まされた。FC岐阜での1年目当初、シュート数とゴール数が同じという時期があった。精度100パーセントの理由は、試合を見れば一目瞭然だった。シュートチャンスがほとんどなかったのだ。
「サッカーはひとりではできない」
前田の言葉が重く響いた。
不器用で真っすぐなサッカー選手だった
引退の一報を受けて、真っ先に思い出したのは、若いころの彼の姿だった。
それは21年もの時間が経過したにもかかわらず、前田の姿勢に大きな変化がないと確信したから。もちろん成長という変化はあったが、思い返せば返すほど、「やっぱり変わらないなぁ」と思わざるを得ない。
そういう意味では不器用な人間だった。サッカーはあんなに巧いのに……。
引退発表と合わせて、古巣磐田のU-18チームのコーチ就任もリリースされた。指導者としての第一歩を磐田で踏み出せるのは、前田にとっては幸運だろう。けれど、もう弟キャラではいられない。新しい覚悟が必要になる。
どんな指導者になるのか。寡黙でどこか不器用な前田の指導者としてのキャリアが楽しみだ。