審判だけが知っているBACK NUMBER
<私が裁いた名勝負>あまりの静けさに、怖さすら感じていました。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
posted2021/01/17 07:00
堀田文枝さん
語り継がれる名勝負をその演者のひとり、審判が振り返る。彼女しか知らない新たな景色が見えてくる。
2012年 全日本卓球選手権決勝
福原愛 4対1 石川佳純
1月21日/東京体育館
出場13年目で決勝初進出の福原が前年覇者の石川に挑んだ決勝。この日は攻撃的なプレーに徹した福原が優位に立つ。11-7で先取すると3ゲーム連取し、第4ゲームを3-11で落とすも崩れず勝ちきった。この大会でダブルスのペアを組んだ2人は、同年8月の五輪で団体銀に輝いた。
◇
あぁ、落ち着いてるな。余裕があるんだろうな。ついに、勝つかもしれないな――。決戦を目前にして、私は背中越しに福原愛さんの静かな自信を感じていました。