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2年生は7人…なぜ大阪朝鮮高は少人数で花園4強を掴めた? 野澤武史コーチが即答したその理由
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byKyodo News
posted2021/01/13 06:00
ベスト4進出を決めた流経大柏戦。準決勝では優勝した桐蔭学園に敗れた
さっそく聞いた。大阪朝鮮高、生徒数の限られた学校で4強まで勝ち上がれた。どうしてですか?
「選手がみずから考える」
即答に近かった。
「花園に入ってからも選手たちで練習メニューを組み立てたりします」
野澤コーチはアタックとディフェンスのストラクチャーを教える。加えて「新しいスキル、トレンドを伝えるようにしています。選手は楽しいし、しかもチームとして咀嚼できるので」。
花園の初戦。三重の朝明高校に対して、開始直後、パントを跳んでつかんだ9番、李錦寿(リ・クンス)がそのまま空中で後方にパス、切り札の15番、金昂平(キム・アンピョン)が走り込んで独走トライを奪った。「アウトレット」と呼ばれる現在進行形の技術だ。
「教えたら、さっそく使った。いっぽうで合わないと考えたら彼らは採用しない」
コロナ禍。強化や吟味の機会は限られた。だから野澤コーチは部員に諭した。
「この大会は成長し続けたチームが優勝する。そのためには予習より復習」
花園では試合間隔が短いので「次へ、次へと意識が向いてしまう」。あえて終えたゲームを振り返り、具体的な改善や進歩につなげる。大阪朝高はその流れをつかまえた。
大会屈指の7番となった金智成
選手もチームも大会で伸びた。無印のフランカー、金智成(キム・チソン)は象徴だろう。あれよあれよと大会屈指の7番となった。
開幕の前、主力のNo.8、金勇哲(キム・ヨンチョル)主将、同じく10番の金侑悟(キム・ユオ)を負傷で欠く時期があった。そのことで金智成らの自覚はいっそう引き出され、結果、個の力が束と化した。層が薄いから層は厚くなった。
「(監督の)権先生はみんなの力を引き出す指導者です」
強烈な個性や確固たる理論で牽引するというよりも外部の声に耳を傾け、ときに能力を借り、選手の自主性をうまく養う。李京柱(リ・キョンジュ)、邵基允(ソ・キユン)両コーチの献身がそれを支えた。