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選手権決勝は110分激闘&PK決着「ストップ・ザ・青森山田」を達成した山梨学院の2つの狙い
posted2021/01/12 11:03
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Naoki Nishimura/AFLO SPORT
決勝戦にふさわしい110分間の激闘――。
11年前と同じカードとなった第99回全国高校サッカー選手権大会決勝・山梨学院vs青森山田の一戦は、2-2のまま延長戦でも決着がつかず、PK戦の末に山梨学院が同校として2度目の優勝を飾った。
息をもつかせぬ攻防は、両校の指揮官による緻密なチームづくりの集大成とも言える戦いだった。
「今年の青森山田は総合力が高い。日本で一番いいチームの強固な組織をどうやって揺らがせるか。考えたのはキーマンである藤原優大選手をどう抑え込むか。(最終ラインにいる)彼がボールを持ち出して対角線上や前線に当てたり、裏を狙うロングパスを供給する。そのボールの出所を遮断できれば相手の攻撃のリズムを消せるし、(主将でもある)藤原選手が動揺することでチーム全体が揺らぐと思った」
「青森山田包囲網」のために多くのチームが松木玖生や大会得点王に輝いた安斎颯馬の2シャドーを警戒すべきキーマンに挙げる。だが、山梨学院の長谷川大監督はボールの出発点に目をつけた。2トップの一角であるFW久保壮輝にDF藤原のマンマークというタスクを与えたのだ。
長谷川監督には勝算があった。神奈川大学監督時代に対峙した関東リーグの対早稲田大戦、ビルドアップの中心だった早大CB鈴木準弥(現・ブラウブリッツ秋田)にマンマークをつけてボールの出所を遮断したことがあった。試合は引き分けたが、狙い通りに試合が進んだ経験があったのだ。
この日の策は的中。対峙した藤原は困惑しながら試合を振り返っている。
「まさか決勝の舞台で相手がCBの僕にマンマークをつけてくるとは思わなかった。どうすればいいのか頭が回らなかった」
どこに動いてもついてくる献身的なFW久保の存在は青森山田に大きな戸惑いを生み、藤原に自由な組み立てを許さなかった。