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「“タレント”ではなく“元なでしこ”で」37歳丸山桂里奈が肩書にこだわる理由…あの“劇的ゴール”から9年
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/12/30 17:05
今年9月に本並健治さんとの結婚を発表した丸山桂里奈さん(37歳)
「みんなベンチスタートよりはスタメンで出たいと思っていますからね。私も周りの選手から『本当にスーパーサブでいいの?』って聞かれたことはありましたよ。でも、私はスーパーサブって1人しかいないし、特別感があって、ラッキーだなと思ってやっていました。そこは出川さんにも通ずるものがあるのかなって。だから、その道のオンリーワンになりたいという意味では、スーパーサブをやっていたことはいまにつながっていると思うんです。ちなみに、私がスーパーサブと言われることを疑問に思っている人もいるかもしれませんが、男女の歴代日本代表で交代出場で決めたゴール数(10点)って私が1位なんです。これを言うのは初めてですし、みなさんが知っていても知らなくてもどっちでもいいのですが、一応言っておきますね(笑)」
「シュートコースが光って見えた」
なでしこジャパンのW杯優勝から、まもなく10年である。丸山さんの名前を一気に全国に知らしめたあのドイツ戦のゴールについては、いまどう思っているのだろうか。
強豪ドイツに押し込まれる時間が続き、耐えに耐えて迎えた延長108分、澤穂希さんからのスルーパスに抜け出した丸山さんの角度のないところから右足で放ったシュートが決まっていなければ、その後のなでしこフィーバーも、いまの“丸山桂里奈”もなかったかもしれない。
「振り返ると、改めて決めておいてよかったと思います。あのときは、永里(優季)が調子悪くて、後半の開始からといつもより早く出番が来て、持ち味が出せるかなという思いで試合に入ったのですが……終わってみればシュートコースは光って見えたし、めっちゃ出せました(笑)。でも私のなかでは、いまだに本当に優勝したのかなって思う気持ちもあります。だって、W杯優勝ですよ。私の人生もあそこで大きく変わりました」
まさに、あの一発が丸山さんの人生を変えたと言ってもいいかもしれない。ただ、丸山さんは人生、いいことがあれば悪いことも半々にあると思ってしまう性格だけに、その後の反動が怖かったとも告白する。
「それまで勝ったことのなかったドイツから、まさかゴールが取れるとは思ってもみなかったですからね。決めたあとは、何か仕打ちがあるんじゃないかと思っていたら、大会後に十字靭帯を断裂してしまったし。人生ってやっぱりいいことも悪いことも半々って思いません?
いまは仕事もプライベートも順調だから、いつか空から大きな隕石でも落ちてくるんじゃないかってビクビクしています。だから、そんなことにならないように道で転んだり、アイスコーヒーを頼んだのにホットが出てきたりすると、それでチャラになるかもと安心したり。お腹を下したら、そのあとちょっといいことあるかもしれないって感覚わかりますかね。まあサッカーでも仕事でも、人生ってそんなことの繰り返しだから楽しい気もするんですけどね(笑)」
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