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地図研究家と見る、箱根駅伝往路ルート 尋常でない急勾配、急カーブの5区は「超人的というしかない」
posted2021/01/02 06:03
text by
今尾恵介Keisuke Imao
photograph by
Nanae Suzuki
2020年に100周年を迎えたのもつかの間、箱根駅伝は空前のコロナ禍の中で次の100年に向けた歴史を刻み始める。沿道での応援は自粛が求められているが、少なくともこれをテレビで見なければ新年が始まらないという人は多い。
東京・大手町から箱根の芦ノ湖畔までを往復する合計217.1キロのレースは往路1~5区、復路6~10区に分けて行われるが、往路の区間ごとの地形の特徴を勾配に注目しながら観察したい。ちなみに鉄道の勾配はパーミル(千分比)で表わし、「30パーミル」であれば1000メートル進んで30メートルの高低差を生じる勾配である。そのパーミルに注目してアップダウンを味わっていただきたい。
まさにスタートにふさわしい「1区」
●1区(大手町~鶴見中継所 21.3km)
まず1区は都心の大手町から多摩川を越えた横浜市の鶴見まで。最初の濠を見ながら南下するコースはまさにスタートにふさわしい。ビル街の大道を南下して三田からは天下の旧東海道(第一京浜・国道15号)へ。品川駅前を抜けた後は東海道線を跨いで南下するが、御殿山の裾を少し上り下りするので1区では珍しいアップダウンがある。品川駅から新八ツ山橋までの標高差は約10メートル程度あるが、選手たちにとっては何ということもないのだろう。その代わりに次の鶴見中継所までの交通規制時間はわずか10分間で、最下位であってもその間に通過しなければならない。六郷橋で多摩川を渡って神奈川県に入る。走るのは微高地にある川崎宿の東側。
最初の難所・権太坂が待つ「2区」
●2区(鶴見中継所~戸塚中継所 23.1km)
京急の鶴見市場駅に近い鶴見中継所からは、各校のエース級が登場する「花の2区」。鶴見川を渡り、京浜工業地帯の工場群を間近に見る生麦では、地名が連想させるビール工場(スポンサー企業のライバル!)を横に見て、首都高速の下を走りつつ横浜駅とシウマイ弁当の崎陽軒を過ぎる。保土ケ谷駅の先まではどの選手も風を切って快走するが、その先に待ち構えているのが最初の難所・権太坂である。
ゆるゆると20パーミル程度で上る区間ではあるが、ピークの標高58メートルは保土ケ谷からの標高差が約50メートルあり、時間も9時半あたりで気温も上昇してくる。峠を越えると下りはさらに急な約30パーミル。この峠は今でこそ両側とも横浜市内であるが、かつては武蔵と相模の国境で、近くを走る東海道線もトンネルでこの分水界(帷子川・境川の両水系)をくぐる。国道1号を一気に下った先は戸塚駅近くまで緩い下りだが、その先に待ち受けるのが台地への上り坂だ。