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地図研究家と見る、箱根駅伝往路ルート 尋常でない急勾配、急カーブの5区は「超人的というしかない」 

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今尾恵介

今尾恵介Keisuke Imao

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photograph byNanae Suzuki

posted2021/01/02 06:03

地図研究家と見る、箱根駅伝往路ルート 尋常でない急勾配、急カーブの5区は「超人的というしかない」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

間もなく幕を開ける箱根駅伝。その往路ルートを地図研究家の今尾氏が解説する

普通の鉄道車両では太刀打ちできない「3区」

●3区(戸塚中継所~平塚中継所 21.4km)

 3区はしばらく台地上を走る区間で、「原宿」のあたりは地名ともども旧東海道の風情が残る。藤沢バイパスから分かれて曰くありげな「鉄砲宿」のバス停を過ぎれば藤沢市で、その先が復路8区で注目される「遊行寺の坂」である。時宗の総本山の名を冠したこの坂道は権太坂より格段に急で、約60パーミルに及ぶ。地形的には台地から低地へ下りるもので、鉄道でいえばアプト式で上り下りしていた信越本線の碓氷峠(66.7パーミル)に近く、普通の車両では太刀打ちできないレベルだ。

 遊行寺の坂を下りきれば藤沢橋で境川を渡る。右手が山門へ通じる遊行寺橋だ。昔ならこの川が鎌倉郡と高座郡の境界であった。南へは江戸時代に観光地として人気絶大であった江ノ島への道が分かれていく。藤沢橋交差点を右折すれば藤沢の宿場であるが、駅伝コースはまっすぐ浜を目指す。

 小田急をくぐり、東海道線を跨いで南西へ向かい、浜が近づくと茅ヶ崎市へ。松林の向こうに相模湾を感じつつ国道134号で西進する。菱沼海岸あたりから相模湾の沖合には烏帽子岩が浮かび、茅ヶ崎駅から来る「サザン通り」の突き当たりがサザンビーチ。一帯は戦前から別荘地として発展したエリアである。湘南大橋で相模川河口を渡れば平塚市で、花水川を渡って唐ヶ原交差点近くが平塚中継所。

戦前のリゾートの空気が今も漂う「4区」

●4区(平塚中継所~小田原中継所 20.9km)

 4区の最初は復路7区と少しの間ではあるが別ルートで、往路が浜沿いを行く。大磯駅入口交差点で左折して復路と合流。ここも明治期に別荘地として知られ、日本における海水浴発祥の地とされる。目と鼻の先の大磯駅は背後の山の背景もあいまって戦前のリゾートの空気が今も漂う。いつの間にか相模平野も終わり、高麗山の山並みを仰ぎつつ国道1号を西進する。かつては御殿場回りに備える山登り用の補助機関車を連結した国府津の駅前をかすめ、坦々と進んで酒匂川を渡る。箱根の外輪山もだいぶ大きく見えてきた。小田原の城下を進んで久しぶりの東海道線をくぐり、早川沿いにいよいよ箱根カルデラへ。

【次ページ】 「ふつうの電車」は立ち入れない世界へ「5区」

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