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羽生結弦の美しさと強さが全選手にエネルギーを…逆境のなかの圧巻の一戦【全日本フィギュア】
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2020/12/29 11:06
5年ぶりに全日本王者を奪還した羽生結弦
「次の試合に向けての練習ではなく、今の自分より良いモノをという気持ちで練習してきました」
ショートは、冒頭の4回転フリップを美しく決めたが、2本目の4回転トウループで転倒し、予定していたコンビネーションジャンプにすることができなかった。
「皆さんの手拍子もあって『こんな感じが大会だよな』って思って1本目を降りることができて、ヨッシャーって思いました。2本目は、着氷で不安があり制御しきれませんでした」
ミスが響き3位発進となったが、宇野は終始笑顔だった。
「こういう緊張感や、不安を、望んでいたんだなと思いながら滑りました。すごく楽しかったです。このような状況下で大会を開いて下さった方々、見てくださる方々、本当にありがとうございます」
宇野「ああ僕の目標はここにあったんだ」
フリーも「楽しさ」は変わらなかった。冒頭の4回転サルコウと4回転フリップを成功。続く4回転トウループが3回転になると、挑戦さえ楽しんだ。
「あまりに綺麗に3回転を跳んだので、これも何かの縁だと思い、もう一回4回転トウループを跳ぼうと思いました」
演技後半に4回転トウループを2度入れ、着氷。フリーは190.59点で、総合284.81点での銀メダルとなった。ただし羽生とは、35点近い点差だった。
「羽生選手は、練習で出来ていることを本番でやってのけるのは凄く大変なことなのに、簡単にやってのける。自分の目標となる選手が、すごく偉大な選手なんだというのを痛感して、嬉しくなりました。『ああ僕の目標はここに合ったんだ』と感じられた試合でした」
そして17歳の鍵山にとっても、新たな経験が詰まった一戦だった。ショートは2種類の4回転を成功する。
「ショートにすべてを賭けようと、集中しました。1本も逃さない気持ちですごく緊張していましたが、落ち着いて滑ることができました」