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羽生結弦の美しさと強さが全選手にエネルギーを…逆境のなかの圧巻の一戦【全日本フィギュア】
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2020/12/29 11:06
5年ぶりに全日本王者を奪還した羽生結弦
「190点と聞いた瞬間に、やべえって思いました」
演技後は、極度の緊張感が解けたことで、急に身体が震えだすほどだった。98.60点の高得点で、2位発進。フリーの滑走順は「宇野の後、羽生の前」という好位置につけた。
そして翌日のフリー。氷に乗った瞬間、宇野の得点が耳に入った。
「嫌でも点数が聞こえちゃって、190点と聞いた瞬間に、やべえって思いました。去年3位だったので、去年より良い演技がしたいと思いました」
重圧のなか、冒頭の4回転サルコウを成功。続く4回転トウループがステップアウトになると、2本目の4回転トウループを連続ジャンプにしてリカバリーした。全体でミスは2つあったが、「4回転3本、トリプルアクセル2本」のプログラムを演じ切り、フリー180.19点、総合278.79点での3位。22年の北京五輪へ、確実な一歩となる演技だった。
「去年とは違って、狙っての3位ということに満足しています。やはり、羽生選手、宇野選手の存在はまだ遠いなということを実感しました。一緒に滑ることができて凄く楽しかったですし、刺激になりました」
田中、佐藤、友野、山本、それぞれの北京五輪への道
北京五輪の出場を目指すトップグループの男子も、渾身の演技を見せた。
今季、怪我からシーズンをスタートさせた田中刑事は、フリーで4回転サルコウを取り戻し、238.83点で、意地の4位となった。
「(怪我からの)復帰へのステップとして全日本に照準を合わせてきました。もどかしい半年でした。今季はまだ跳ばなかった4回転トウループもありますし、来季は心身共にベストでもう一度戦いたいです」
来季は、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の曲で挑むという。必ずや男子フィギュアに新風を吹かせてくれることだろう。
また大技の4回転ルッツを持つ佐藤駿にとっては、自らの大技に苦しめられたシーズンだった。全日本選手権では安全策をとり、4回転ルッツを回避したものの、ショートもフリーも、むしろ3回転ルッツでミスがでてしまった。
「来年こそ完成度の高い、ノーミスできる演技を目指します」
才能溢れる16歳は、今がまさに伸び盛り。来季は、4回転ルッツを武器に怒濤の攻めを見せてくれるはずだ。