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直前インタビュー 15戦全勝の俊才・田中恒成が語る「(井岡とは)目指しているところが全然違う」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHatanaka Boxing Gym Andre
posted2020/12/30 11:07
4階級制覇王者で現WBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(Ambition)との対戦が目前に迫る田中恒成
田中 才能よりも、積み重ねてきたものでできているボクシング。だからこそ前半でも後半でも同じボクシングができる。身体に染み付いているものなので、すごい練習をやってきたんだなと感じています。ただ、KOで決めたい気持ちは強いです。それくらい強い気持ちで臨むし、それくらい仕上げて試合に臨みます。
――井岡選手とはスパーリングの経験があるんですよね?
田中 高校生の時にやったことがあります。7、8年くらい前ですが、その時のことは少し覚えています。分が良かったのは井岡さんの方。でも3ラウンドの予定で、ラスト30秒だけ思いっきり頑張って、「ありがとうございました」って言ったら、井岡さんは「ありがとう」と言ってくれたんですが、向こうの会長、井岡さんのお父さんに「いや、4ラウンドって言ったやろ」と言われたんです。それで4ラウンド目もやって、そこで歯を折られました(笑)。スパーはその1度だけです。
3階級制覇でも「『悔しい』を通り越して『恥ずかしい』」
――井岡選手の「格が違う」「メリットがない」といった日本のボクサーとしては珍しい挑発的とも取れる発言はどう感じていますか?
田中 本音を言うと、まあ言っていることはわかるなとは思います。井岡さんの今のポジションにいたら、下の階級から来た選手とはやりたくないのは当たり前。だから、気持ちはわかるなと。ただ、それ以上には何とも思っていないですね。結果としてこういう試合が決まったんで、俺にとってはチャンスです。
――海外での評価はむしろ田中選手の方が高いことはご存知ですか? 一般的に、日本人では井上尚弥選手に次ぐ2番手扱い。パウンド・フォー・パウンドでもだいたい11~15位くらいにいるんじゃないかと思います。
田中 いやー、実感はないです。それなら早く(米国リング登場の)お声をかけて欲しいですけどね。
――これほど高く評価されながら、日本国内での知名度が追いついていないことへの悔しさは感じていますか? 知名度が上がらなかった理由を自身ではどう考えているのでしょう。
田中 日本人では数人(6人)しかいない3階級制覇を成し遂げて、それでこの知名度というのは、「悔しい」を通り越して「恥ずかしい」と思っていました。その理由は、圧倒的な強さがなかった、キャラが濃くなかった、名古屋っていう場所だったとか、そういったいろんなものが重なっていると思います。