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京大に進学してノーベル賞を獲りたい? 島のラグビー部が目指す花園制覇と難関大合格、 32歳監督の挑戦
posted2020/12/26 17:01
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
瀬戸内海を挟み、本州と四国を結ぶ「しまなみ海道」の発着点である広島県尾道市。その本州側に位置する尾道駅側の桟橋からフェリーに乗って約5分。尾道水道を隔てた人口約1万4000人の向島(むかいしま)に、私立尾道高校はある。
近年の躍進が目覚ましいラグビー部の創設は2002年。14年の全国高校ラグビー大会(通称・花園)ではベスト4に入るなど強豪校の仲間入りを果たした。12月27日から始まる100回大会にも14年連続15回目の出場を決めている。
島内の一軒家やアパートを借りて
緊急事態宣言が全国に拡大する前の2020年春、筆者は尾道高校ラグビー部を訪ねた。
校舎敷地内にあるグラウンド、部員の大半が暮らす合宿所はすべて向島の島内にある。合宿所といっても全員がひとつ屋根の下に暮らすのではなく、島内の一軒家やアパート数カ所を借り切る形だ(食事は3食とも学校の食堂で提供される)。
印象的だったのは、ラグビー部の学生たちが勉学に励む姿だった。スポーツコースもある同校だが、ラグビー部の在籍者はおらず、今や部員の約65%が特進コースにあたる「最難関コース」「難関コース」に在籍。この「ラグビー全国レベルの強化と最難関および難関大学を目指すことができる」という特色が生徒を集め、現在66人の部員のうちの約70%が広島県外の中学校からの入学者だという。
名将・梅本勝氏の後を継ぐ
チームを率いるのは田中春助監督、32歳の若手監督だ。江の川高校(現石見智翠館高校)初代監督を務めて強豪の礎を作った梅本勝氏(現倉敷高校監督)の後を継ぎ、19年1月にコーチから昇格した。
OBでもある田中監督は同校の花園初出場にフッカーとして貢献、進学した福山大時代からコーチの経験を積んできた。梅本監督時代から続く文武両道や相撲でインターハイに出場するなどスポーツの「シーズン制」をより進化させるとともに、尾道ラグビー部に新たな色を加え、従来の部活動の枠に囚われない新たな取り組みをどんどんと取り入れている。