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「箱根駅伝とは“別の軸”で世界と戦える選手を」“指導者”大迫傑が次の世代に託したいこと
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byShota Matsumoto
posted2020/12/31 11:08
大迫傑は日本人が世界と戦うためのチーム「Sugar Elite」を発足。どんな未来を描いているのか
夢を細分化して考えたから、結果を残すことができた
後半は座学。この日のテーマは「夢」。それもまた大迫らしかった。
冒頭では、まず子供たちに「どんな夢を持っているのか」を尋ねた。
「陸上に限らず、科学者になりたいという子もいたし、医者になりたいという子もいた。僕自身もオリンピックという大きな夢があります。ただ、子供たちはみんな大きな夢はあるけれど、どうやったら到達できるのかが分からないのが実情です。
目標にたどり着くために必要なのは何か、そのためにどんな中間目標を立てるべきか、そこから日々の練習に落とし込んで、何を意識するのか。今回はこれを子供たちに考えてもらい、書き出してもらいました。
僕自身もそうやって夢を細分化して考えてきたから、アメリカに行って結果を残すことができましたし、具体的に何をしなくてはいけないかを明確にするのは僕に限らず多くの陸上選手やスポーツ選手がやっていることです。
考えることはとても重要です。前半のトレーニングでは普通に教えただけだと飽きてしまうと思い、ゲーム性を取り入れました。本当はどうやったらこのゲームに勝てるのか、もう少し頭を使ったり考えたりする要素をプログラムに加えたかったのですが、これは今後の課題ですね。
シュガーエリートキッズの価値は、競技だけではなく今後生きていくために大切になる教育的な部分、子供達の視野を広げられるところにあると思っています。今回は夢がテーマでしたけど、他にももっと伝えられることがあると考えているところです」
「きついところを乗り越えてから判断しなさい」
以前、大迫に自身の子育てについて聞いたことがある。
そのなかで印象的だったのは、長女が「ピアノが難しくてつまらない、やめたい」と言い出した時のエピソードだ。
「今頑張って、それを乗り越えたらもっと楽しくなるかもしれない。ここを乗り越えて、それでもつまらなかったらやめればいいと話しました。きついところでやめるのではなく、きついところを乗り越えてから判断しなさいということはよく話しますね」
子供は気まぐれで感情的になるもの。親もつい一方的に押し付けがちになるが、大迫は大人に話すように冷静に順序立てて説明をする。それは今回のイベントでも同じだ。
「きちんと説明しても『わかんない!』ってなることはありますし、子供の頃はざっくりでいいんです。ただ、何かをやり遂げる時に自然と考える習慣ができていると、大人になってから強い。だから親としてはその大切さを常に伝えることが大事だと思っています」