濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「地獄を見てきた」アイドル出身女子プロレスラー3人が挑む“ダッサい人生”逆転をかけた泥臭い勝負
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2020/12/29 11:05
3対1の状況から逆転を果たした白川未奈(中央)。リーダーの中野たむ(左)とウナギ・サヤカと共に防衛を達成した
“動く”ことで道を作った
たとえば、大阪大会でタッグを組み、勝利したなつぽい(旧リングネームは万喜なつみ)とひめか(同じく有田ひめか)はもともとアクトレスガールズで同門だった。団体初の後楽園ホール大会では、タッグマッチで対戦している。ひめかは春にアクトレスガールズを離れ、夏にスターダムへ。なつぽいは東京女子プロレスでチャンピオンになり、秋にスターダムに参戦してひめかと“再会”した。
「今こうして同じリングに立てているのが嬉しい。でも、前と変わらずにやってるだけではエディオンアリーナ第一のリングでタッグを組むことはできなかった」
ひめかは試合後にそう語っている。レスラーの選択、キャリアの重ね方はそれぞれだが、彼女たちの場合は“動く”ことで道を作ったのだ。
芸能界で「泥水すすってきた」3人
コロナ禍も大きい。突然、試合の場を奪われるという事態は、ほとんどすべてのレスラーに「これから自分は何をすべきか」、「どこでどんな闘いをするのがベストなのか」を考えさせた。
「コロナ禍になって、プロレスラーが全員リングに上がれない状況ができてしまった。これをチャンスにするしかないと思いました。私は7月に復帰するまで10カ月、ケガで欠場していたので。試合ができなかった分をここで爆発させなかったらプロレスラーとして生きる道はないなって。本当に必死です、今」
そう語るのはウナギ・サヤカ。東京女子プロレスで「うなぎひまわり」の名でデビューし、11月に活動の場をスターダムに移すとリングネームも変えた。東京女子では大きな実績を残していなかったが、スターダムでは中野たむ、白川未奈とのチームCOSMIC ANGELSですぐに6人タッグ王座を獲得している。デビュー2年弱、初タイトル戦での戴冠だった。
白川も東京女子から10月にスターダム参戦。その2人を引っ張るのがキャリア4年あまりのたむ。3人中2人が“新参者”のトリオだが、不思議と違和感はない。
たむ、白川、ウナギともに芸能界からプロレスに挑戦してきたという共通点があるのだ。全員アイドルグループに所属していたことがあり、芸能界で何度となく悔しい思いをしてきた。グラビアアイドルとしても活動する白川は、その芸能生活を「泥水すすってきた」と表現する。COSMIC ANGELSにとって、プロレスのリングは人生の逆転をかけた場所なのだ。