濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「地獄を見てきた」アイドル出身女子プロレスラー3人が挑む“ダッサい人生”逆転をかけた泥臭い勝負
posted2020/12/29 11:05
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
女子プロレス界のトップランナーと言うべき団体スターダムが、12月20日にエディオンアリーナ大阪(大阪府立体育会館)第一競技場でビッグマッチを開催した。
“府立第一”進出は団体史上初、現在の女子プロレス界において、関西で最大の興行となった。そこで感じたのは、圧倒的な“新しさ”だ。とにかく見える風景がこれまでと違った。
メインイベントの“赤いベルト”ことワールド・オブ・スターダム王座をかけた選手権試合は林下詩美vs渡辺桃。チャンピオンの林下はデビュー3年目に入ったばかりで、11月の仙台大会で“スターダムのアイコン”岩谷麻優を下して団体の頂点に立った。対する渡辺は中学生でデビューしたからキャリアはあるが、まだ20歳と若い。
2人による大会場でのタイトルマッチは、まず風景として抜群に新鮮だった。内容も“赤いベルト戦”にふさわしい激しさ。勝った林下はインタビュースペースでの記念撮影後、床に座り込んでしまった。それほどの闘いであり、林下はこのベルトを巻いてメインに立つ“重さ”を体感したはずだ。
何があっても次々に選手が台頭した
メイン以外でも、スターダムの風景は変わり続けている。昨年から今年にかけて何人もの選手が引退、木村花の死という悲劇もあった。遡れば宝城カイリ、紫雷イオというツートップがWWEに移籍したことも。
ただ何があっても次々に選手が台頭し、ファンの目を惹き続けてきたのもスターダムだ。この日のセミファイナルはジュリアvs朱里。ジュリアは昨年、アイスリボンを退団してスターダム入りした新鋭だ。朱里は立ち技、総合格闘技2冠を達成しUFCにも参戦した実力者で、いくつもの団体を経てフリーとなり、今年秋からスターダムに腰を落ち着けた。
ジュリアと朱里を筆頭に、今のスターダムにはさまざまなリングからチャンスを求めて選手が集まってくる。この団体で彼女たちを“発見”するファンは多いし、よりコアな観客は選手のキャリア、その変遷にドラマを感じていることだろう。