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「地獄を見てきた」アイドル出身女子プロレスラー3人が挑む“ダッサい人生”逆転をかけた泥臭い勝負
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2020/12/29 11:05
3対1の状況から逆転を果たした白川未奈(中央)。リーダーの中野たむ(左)とウナギ・サヤカと共に防衛を達成した
「ダッサい人生です。でも」
12.20大阪大会、3人は人気ユニットSTARS(岩谷麻優&スターライト・キッド&ゴキゲンです☆)相手に初防衛戦を行ない、チーム全員が脱落するまで続くイリミネーションルールで勝利した。
ウナギが3カウントを取られ、たむも敗北。3対1の状況から白川が巻き返しでの防衛だった。イリミネーション独自の「オーバー・ザ・トップロープ」(トップロープを越えてリング外に転落すると失格)で岩谷、キッドを落とし、ゴキゲンにはとっておきの必殺技GSSを決めた。グラマラス・ストロング・スタイルの略。“闘魂Hカップグラドル”の歴史と思いを込めた一撃だった。
白川とウナギはキャリアが浅く、スターダムにも慣れていない。たむはたむでチームリーダーであることに慣れていない。しかし短期間でベルト奪取、防衛という結果を出した。このチームの強さはどこにあるのか。そう聞くと、たむは「いや、弱いです(笑)」と答えた。
「キャリアも浅いしアイドル上がりでチャラチャラしてます。可愛いだけです」
自虐的に言った後で、こう付け加えるのだった。
「でもアイドルって、どんなプロレスラーより泥臭いんです」
けっこう地獄見てきたよね私たち、とたむは言う。白川もウナギも頷いた。
「私たちはカッコいい人生送ってないんですよ。ダッサい人生です。でも、そのダサい3人で明るい未来を作っていきたい」(白川)
30歳でデビューしたから見せられる夢
ウナギはこのユニットを「夢がある」と語った。
「正直まあまあ歳いってて、キャリアは浅い。でも諦めなかったらどこまでも行ける。何を始めるにも遅すぎることはないんだっていう夢を見せたい」
COSMIC ANGELSにエリートは1人もいない。白川はプロレスデビュー時点で30歳、始めるのが遅いと何度も言われた。しかしそういう自分だから見せられる夢もあると考えている。
「(年齢を理由に)プロレスをやっていなかったら絶対後悔してたと思います。夢を持ち続ける限りいつだってなんだってできる。それを同世代の女性に見せていきたい」
日本ではなぜか、年齢(若さ)と能力の優劣がイコールだと考えられやすい。特に女性は見た目も行動も外野が勝手にジャッジしたがる。30代のグラビアアイドルがプロレスラーになってベルトを巻くことは、そうした風潮への抵抗でもあるのだ。